第6章 唐突
side 冨岡
「…っ、間に合え……間に合ってくれ……っ」
先程、俺の元にカラスが伝令を伝えに来た。
下弦の鬼が現れ、複数の隊士が殺された…。
戦いの場から逃げた隊士の1人が助けを呼ぶ為
近い場所にあった蝶屋敷に向かったが
あいにく胡蝶は任務で遠方に出ている。
緊急を要する事態が起きたことで
鬼が現れた場所から、蝶屋敷の次に近いのは俺の屋敷だった。
すぐにその場所へ向かおうと屋敷を出た俺は
詳しい話をカラスから聞いた。
助けを呼びに行った隊士が、その道中
見ず知らずの女に手当を受け……
その女は応急処置だけ施した後
鬼が現れた場所に向かったと。
女の特徴を聞いた瞬間、無意識に走る速さが早くなった。
…その女は、俺の屋敷にいただったからだ。
だと気付いた瞬間、嫌な汗が全身に流れ、あいつの身に何か起きたらと思うと…
俺は冷静さを失っていた。
十二鬼月である下弦の鬼に
がどれほど対抗出来るか分からない。
あいつの剣の腕は素晴らしいが
まだ正式に鬼殺隊へ入隊したわけでもない、
鬼の首を切った事すらないというのに…。
なぜたった1人で
鬼のいる場所へ向かったんだ…。
もしが鬼に殺されてしまったら…と、想像するだけで焦る気持ちが膨らみ
あいつが無事である事を祈りながら走り続けていると
俺の鎹鴉の寛三郎が空から飛んで来た。
「義勇…、少シ飛バシ過ギダァ。バテルゾ?」
「…悪いが今は急いでいる、話し掛けるな。」
「イツモ冷静ナ義勇ガ、慌テテルノハ珍シイナァ。
アノ娘ガソンナニ心配カ?」
…当然だろう。
努力の末、自分に合った流派を身に付け
鬼殺隊へ入隊することを決心したばかりのを……死なせるわけにはいかないだろう。
本人は謙遜していたが
は鬼殺隊できっと役に立つ…
上官である柱として、優秀な人材を失うわけにはいかないんだ。