第6章 唐突
『ふぅ……何とか間に合ったぁ…』
「っ、あ…貴方は…、、さん…?」
『…?あ、この前の…』
私がギリギリのタイミングで助けたのは
先日蝶屋敷で、治療を拒否してた男性隊士だった。
『もう復帰してたんですね?無事でよかったです。』
隊士に向けて言葉を放っていると
前方から鬼の足音と、嫌な声が聞こえてきた。
「増援かぁ…。でも女1人だけなのね。
まぁ、その男よりは、食べたら美味しそうだけど。」
『…あなたも女でしょ、鬼だけど。』
刀を構えながら鬼の容姿を見ると
額から小さな角が2本生えていて
顔付き、髪型からして女の子が鬼になったような姿…
…そして、片方の瞳には
"下肆"の文字が刻まれていた。
「き、気をつけて、下さい…
奴は十二鬼月の1人…っ…、下弦の鬼です!!」
『そうみたいですね…』
…十二鬼月の特徴は、しのぶちゃんに聞いた事がある。
少なくとも、人間を100人は食べていて
全員が特殊な力…血鬼術を使う異能の鬼…。
鬼の首領である鬼舞辻無惨の血を多く分け与えられて強化されているから、十二鬼月は強者ばかりだと…。
まさか鬼殺隊に入隊する前から
十二鬼月と出会うなんて…
ついて無さすぎじゃない?
それでもここに来たからには
この鬼と戦うしか選択肢は残ってない。
負傷した隊士の状態をザッと見たけど
手でお腹辺りを押さえて顔を顰めているから
たぶん肋骨が数本折れてるし、腕や顔も怪我をしていて出血もひどい。
自力では動けないだろうから
私がこの人を抱えて、鬼から逃げ切れるとは思えない…
だから、今私が出来ることと言えば…
この鬼と全力で戦い、生き残る為には
鬼の首を斬って倒す手段しか残されていなかった。
両手で刀を握り、刃先を鬼に向けると
その鬼は不気味な笑みを浮かべていた。