第1章 死神と鬼狩り
杏寿郎side
話を聞いていると少し、、いや確実におかしな単語を聞き逃さなかった。話の腰を折るまいとしたがどうしても確認すべき事があった。
「君は祖父が二千年前から死神をしていたと言ったが、、不老不死なのか?」
「いや、歳は取る。ゆっくりだがな。私も8つの時に死にあの世に行った。それから死神としての才能を買われ祖父の養子になった。厳密な年数は数えていないが大体140年経つ。」
あっけらんと、さも当たり前のようにありえない年齢が出た。
「よもや!てっきり同年代だと思ったが!人は見かけによらないな!」
「死神に年齢は関係ないからな。あるのは強さだ。だがもうその強さもこの世界では無意味になってしまったがな。」
リーンの放った言葉には寂しさが含まれている。
彼はきっと死神の世界で強くあろうと自分を奮い立たせ戦い続けて来たのであろう。
それがこうもあっさりと『神隠し』としてその努力が水の泡になってしまう事が悔やまれるのかもしれない。
「年上ならきちんとした対応をしなければなりませんでした。数々のご無礼失礼した!」
そう杏寿郎が姿勢正しく頭を下げると。
「なっ!やめてくれ!確かに長くは生きてるが、こちらも命を助けてもらう身だ。言わば杏寿郎は恩人!恩人に頭を下げて貰っては困る!今まで通りの口調で構わない!杏寿郎とは上下関係など作りたくないのだ!」
その言葉を聞いた所でパッと顔をあげ
「そうか!なら良かった!君と俺は対等だ!気兼ねも遠慮もこれからはお互いしなくていいな!改めてこれからよろしく!!これでこの話は終いだ!」
目をまん丸にしたリーンの顔はまさに同年代のそれだった。
「ふふっ…。してやられたな。頭を下げるから何事かと思ったが、杏寿郎、君は案外イイ性格している。」
「褒め言葉として受け取っておこう!」
部屋には2人の穏やかな笑い声が響き、しんみりとした空気は完全に無くなり杏寿郎はリーンならこの世界でも生きていけると確信したのであった。