第1章 死神と鬼狩り
六畳一間の部屋を与えられたようで、中央に杏寿郎と向かい合って座る。
「さて、これからは尋問だな。何から聞く?」
先に柊が淡々とした口調で話を切り出す。
「先ほど俺ば君の質問に答えたが、そこから導かれた答えは出たか?」
「あぁ。だが推測の域だがな。」
いきなりの核心に迫る問いかけだったが、柊は自身の考えを杏寿郎に伝える。
「おそらくだが、ここは私が存在していた世界とは違う場所だ。現世ともあの世とも地獄でもない。同じ日本だが似て否なるとこ。とでも言うのだろうな。」
その言葉に杏寿郎は驚きはしたが、口を挟むことはなかった。
杏寿郎のその反応を見て柊は更に続ける。
「死神とはいわゆるあの世の世界の住人だ。死んだ魂魄。まぁ、浮遊霊だな。それらを成仏させたり、悪霊になったホロウというものを退治するのが主な仕事だ。」
「死神は言わば死者の管理人だ。死神にも組織があって私の祖父はその総隊長を二千年以上務めたが、『鬼に殺された』人間など見たことも聞いたこともない。」
鬼がいない世界。そんな理想な世界を夢見て何世代も続いてきた杏寿郎にとってこの話は夢物語だった。
「鬼がいないのか、、。それは平和な世界だな、、。」
隣の芝が青くみえる。そんなことわざが頭をよぎる。
柊の世界には鬼はいない。だが、死者がホロウになれば無差別に魂を食っていく。目に見えるわけではないから逃げることもなく次々と死んでいく事もある。メノス以上になれば被害は街規模になる。
どちらの世界が幸せだなんて比べる事なんかできないのだ。
「君が異なる世界から来たと言うことは理解した。死神の事も。だが、なぜどうやって来たんだ?元に戻る方法はあるのか?」
あぁ、また核心を突いてくるなぁ。
柊はどう答えるか悩む。
おそらく柊はユーバッハに殺されている。あの戦いで確実に死んだのだ。
元の世界に戻ったとてその瞬間待っているのは『死』だ。
「わからない。こんな状況の話は聞いたことがなくて。神隠しにあったと割り切るしかないだろう、、。元に戻る方法も、、恐らくは、、ない。」
出会って数時間だが、口数は少なくても的確な行動、情報処理を行ってきた柊の様子を見て、こう口淀む姿を見ると内情は不安なんだろうと杏寿郎も心が痛んだ。