第7章 死神と蝶屋敷
それから2日間大人しく蝶屋敷で過ごした。
翌日目を覚ましたカナヲはすっかり元気で良かったと抱きしめると顔を真っ赤にして逃げていく。
え?嫌われた?
呆然とカナヲの後ろ姿を見送るとしのぶが
「あら珍しいカナヲがあんな反応をするなんて。」
どうやら嫌われてはないみたいだ。良かった。
「柊さん。稀血と霊子についての見解と考察をお話ししておこうかと思います。今お時間大丈夫ですか?」
場所をしのぶの部屋に移し、人払いをした後2人で向かい合って話をする。
「まず、柊さんの稀血についてです。鬼に匂いを嗅がせると興奮して襲ってきました。これは通常の稀血と同じです。ですが血を飲ませたところ、とんでもなく力が強くなりました。稀血と言ってもそこまで急激に強くなる事はありません。効率がいい。その程度のものです。ですが、柊さんの血を飲んだ鬼は興奮状態が恐ろしく、異能がなかった鬼ですが、突如血鬼術を使い始めたんです。」
「それは、私の存在は鬼にとって稀少で喉から手が出るほど欲しい物。ということか?」
「そうとも言えないかもしれません。というのも、しばらく観察していると、その能力は一時的な物だったんです。つまり、鬼にとって柊さんの稀血は覚醒剤のような物。血を飲んだからと言って永続的に強くなれる物ではないという事です。それに効果が切れた鬼は著しく身体能力が低下し、元々の力よりも低くなっていました。まさに諸刃の剣ですね。ですが、下級の鬼には関係ないかもしれませんが、十二鬼月にはもちろん知能のある鬼には注意すべきかもしれません。」
「…私の血を利用していつでも摂取できるよう飼い殺す。」
「えぇ。柊さんにとっては酷な話ですが。」
「だが覚醒状態さえ乗り切れば自滅してくれる。そういう事だろう?」
「そうですが…。っ!まさか!血を飲ませて氷漬けにして時間稼ぎ!とか考えてませんよね?!絶対ダメですからね!」
「……。」
「そんな顔してもダメなものはダメですから!」