第7章 死神と蝶屋敷
「死神の世界とこちらの世界で体の変化はありますか?」
それははっきり言ってある。大いに。
「疲れやすくなった。死神は一種の霊体だからな。怪我や疲労は霊子が充満している場所に行けば大抵は治る。だが今は…ただの人間…なんだろうな。前の様に治るからと無茶な戦いはできないかもしれない。」
「無茶って…例えばなんですか?」
「…触れた箇所から腐るホロウがいた。左手が触れたから腕を切り落とした。」
「っな!!…その腕は…?」
「もちろん回復する。肉体を回復させる薬を打ち込めば一発だ。」
無茶な戦いと聞いて不死川のような特攻や、言ってもせいぜい懐に入り込んで多少の傷程度と思っていたが、想像より遥かに過酷だったと驚く。
「痛くは無いんですか?自分で自分の腕を切るなんて、並大抵じゃないとできませんよ。死神とは皆さんそうなんですか?」
「特に痛くはなかった。というか…私が特殊なんだ。私は痛みを感じない。…生前、…暴力を受けた。そうしなければ私は頭がイカれていただろうな。」
しのぶは手を、口を強く噛み締める。
頭をよぎったのはカナヲの姿。
可愛い自身の継ぐ子である栗花落カナヲも彼女と同じく暴力を受け感情を上手く表に出せない子だ。
年齢の話になった時1度目は8歳で死んだと話していた。
同じ大正の時代、この歳で亡くなるなんて理由があるはずなのに。
病だったり、口減しだったり。彼女がなぜこんなに表情が乏しいのか、なぜここまで命がけの戦いに身を置くのか。少し考えればわかる事なのに。
ぎゅっとしのぶは柊を抱きしめる。
「ごめんなさい。辛いことを思い出させました。」
「…そんなことない。この話は杏寿郎も知っているし…。それに…しのぶには知っててほしい。そう思った。」