第6章 死神と過去
さりげなく町の人にその事を聞くとどうやら黙認されてるらしい。
貴族が関わっているため死神も手を出せない。中には霊圧が高い子どもを引き取り死神として育てるのがステータス。と言う貴族のお遊びにもなってるほどだ。
それを知ってからお多江のニコニコとした笑顔に嫌悪感が募る。でも今の私には何もできない。だから耐えた。知識と教養を身につけ、自分の身を守る術を見つける。もう誰にも支配されたくない。その思いだけだった。
ある日町のはずれにある原っぱで1人の時間を過ごしていると黒い着物を着た男が近づいてきた。死神だ。
彼は六車拳西と言って最近住人に異変はないかと聞いてきた。
お多江と貴族たちの事かと思ったけれど最近ではない。きっと何十年、何百年も前から続いてるのだろう。下手に話して目をつけられたくない。今まで頭が悪いふりをして逃げる隙を狙ってきた。水の泡にはしたくない。
首を振ると拳西はじーっとこちらを見つめる。
「お前、かなり霊圧が高いな。」
どうやら身を潜める事に生涯を捧げてきたお陰か霊圧を極限まで下げる事に長けているようだ。
面白半分に拳西は私に霊圧の込め方。いざという時身を守るための霊圧の飛ばし方を教えてくれた。
そしてある日事件が起きた。
きっかけはなんだったのかは思い出せない。あの時私は怒りに身を任せ霊圧が極限にまで高くなっていたらしい。
貴族が来たのかお多江の子どもたちに何かあったのかいつかの死神、拳西が言っていた『住人に何かあった』のか。或いはその全てだったのかもしれない。
その事件を知る人は誰も残っていない。私を除いて。
とにかく霊圧が暴走し、全身が熱く、焼けるようだった。
その高い霊圧をいち早く感知した山本元柳斎が現場に駆けつけた時にはすでにリーン地区は消滅していた。そしてその真ん中に私が倒れていたのだ。