第6章 死神と過去
(ここは…私は死んだ気がするのに。綺麗な雪の華を見ながら…)
気がつくと古い街並みの中に立っていた。綺麗な屋敷が所狭しと並んでいて街を歩く人々も綺麗な着物をまとい優雅に歩いている。
「あら。新しい住人さんだね。ここは流魂街の南第十四地区『リーン』だよ。うちにいらっしゃいな。」
どうやらやはりここは『あの世』らしい。
東西南北に分かれてそれぞれ1から90の区画に分かれていて、数字が大きくなるほどに治安もそれに応じて悪くなるらしい。
十四番目と言うことはそれなりに治安はいいらしい。
私を世話してくれると買って出た人は『お多江』さんと名乗り彼女の住む家に住むことになった。
彼女はいつもニコニコと笑顔で過ごしていて、それがなんだが恐ろしく居心地が悪かった。
自分に名前はないと言うと白い髪だからシロちゃんと呼ばれるようになった。なんでもよかった。
しばらくするとお多江さんは別の子どもを数人連れてきた。どの子も綺麗な見目をしていた。珍しい髪や瞳の色をしている子には特に可愛がっているようにみえる。私もそのうちの1人だ。簡単な読み書きや食事作法、一般常識などを教え込まれた。何故?この流魂街は次の輪廻を待つ間だけの場所と聞いたのに。今知識を授かっても来世には持っていくことはない。
そんな疑問を持った頃お多江の家に身なりのいい男がやってくる。
その様子をそっと盗み聞きしていると。
「今いる子どもで男の子はこの子がおすすめです。華族出身で教養がすでに身についております。」
「このシロと言う子は?女だが見た目がいい。人形として囲うのも悪くない。」
「…その子は生前の暮らしが酷かったのか、見た目は良いんですが教養がまるでなく今仕込んでいる最中です。もう少し時間を頂ければ最高の人形として献上できるかと思います。ただ…他の貴族の方もシロが気になってるようで…。」
「わかっている。その分また良い思いをさせてやろう。」
「おほほ。ありがとうございます。」
その会話を聞いてゾッとした。
生前に聞いた父と母との会話と同じだった。
お多江は自分の私利私欲のために子どもたちを保護し、そして尸魂界の貴族に養子という名の人身売買を行っている。