第5章 死神とお館様
お館様の目を見てしっかりと自身の名前を伝える。
「そう、柊。君はとても数奇な運命の元に生まれたようだね。杏寿郎からは鬼殺隊ではなく穏やかな人生を送ってほしいと聞いていたけれど、それに関して後悔はないかい?」
以前杏寿郎と話した事だな。だがもちろん以前と気持ちは変わらない。むしろ、さらに杏寿郎の側で共に戦いたいと言う気持ちが高くなる。
「…真央霊術院という死神になるための養成施設があります。そこでまず教えてもらう言葉がございます。『死神 皆須く(すべからく)友と人間とを守り死すべし』私はこの言葉の意味が理解できませんでした。」
お館様と杏寿郎は静かに柊の言葉の続きを待つ。
「人間を守り死ぬ事はその通りだが、友とはなにか。そう思っていました。だが、杏寿郎と出会いやっとその言葉の意味が理解できた。私は杏寿郎を守りたい。そして杏寿郎が守りたいもの全ても。」
柊は杏寿郎に視線を向ける。杏寿郎もその視線を感じたのか目を向けその視線が絡み合う。
ふわりと微笑む柊。そしてまたお館様の方へと居直る。
「後悔はありません。3度目の人生鬼殺隊の一員としてこの命捧げます。」
「…そう。柊の覚悟は決まってるようだね。今日柊と話ができてよかったよ。」それから、と話を続ける。
「藤襲山で産屋敷家のものが世話になったようだね。」
「え…?」そう疑問に思うと。
「最終選抜を指揮していたのは産屋敷輝利哉とくいな。わたしの実子たちでね。『優しい言葉を頂いた。』そう嬉しそうに報告してくれてきたんだよ。」
「あの子たちが…。そうですか。まだ幼いのに立派なお勤めをこなしていたので思った事を述べたまでです。」
「それでも辛い言葉を投げつけられる事もある。ありがとう。柊。」