第5章 死神とお館様
初任務は滞りなく終わり、あやめが一通の手紙を運んできた。
差出人は杏寿郎からで、お館様のお目見え通りがあるとの事だ。
家に帰らずそのままお館様が待つとある屋敷へと向かうように。そう書かれていた。
「全く…。もし私がこの任務に手こずって約束の時間に間に合わなかったらどうしていたのだ。」
まぁそんなヘマはしないという私への信頼と受け取っておこうか。
「破道の三十一 赤火砲。」屋敷の住所が載った手紙は安全のために燃やす。
「……以前なら辺りを更地にできるほどの威力だったが、まぁマッチ代わりだと思えば便利だな。」
そう1人ごちるとその場を後にした。
ここか。約束の場所に到着すると立派なお屋敷が構えていた。
表門をくぐると杏寿郎がいた。
「杏寿郎!君も来ていたのか!」側に駆け寄る柊。
「リーン!初任務お疲れ様。なに、お館様と会うのに君が粗相をしでかさないとは言い切れんからな。」はははと笑いながらいう杏寿郎に、
「粗相とはなんだ。心外だな。私ほど上官からの指令に忠実な部下はいないぞ。」そう言ってむくれる。
「父上との初対面の時を忘れたのか?」
「あれは槙寿郎が悪い」
そんな掛け合いをしながら庭の方に出る。
「お館様の御成です。」その掛け声と共に柊と杏寿郎は屋敷の縁側の方へ体を向け、刀を腰から外し方膝をつき顔を伏せる。
「杏寿郎。柱合会議以来だね。」そう静かに縁側に現れる一組の男女。
「お館様におかれましれも、御壮健(ごそうけん)で何よりでございます。」杏寿郎が挨拶をする。
「うん。2人とも顔をあげて構わないよ。」
その言葉に柊はお館様の姿を見上げる。
驚いた。こんな血生臭く、死と隣り合わせの殺伐とした組織の当主などそれこそ強靭な精神を持つ強面の男性を思い浮かべていた。だが実際はどうだ?年齢は30代か?年齢もさる事ながらその雰囲気が柔らかく上品で神秘的な存在だった。
うちの総隊長とはまさに正反対だな。
「それから、異界からの客人だね。そして新たに私のこどもたちの一員になってくれた事に感謝するよ。改めまして、私は産屋敷家の当主として鬼殺隊の責任者としても務めている産屋敷耀哉。こっちは妻のあまね。君の名前を教えてくれるかい?」
「リーン 柊と申します。」