第4章 死神と日輪刀
「柊。久方ぶりだなぁ。そしてもう随分と我をほったらかしにしてくれたなぁ。この罪は重いぞ。」
ゆったりと話す彼女は蘭。柊とは正反対の褐色の肌に漆黒の髪そして血のような真紅の瞳。一見普通の女の子だが、頭にはぴょこんとふわふわの獣耳が生えている。そして白い西洋のレース生地のドレスに包まれ、手には薄藍色の洋傘を持ち全体に蘭の花が描かれている。まさに人間離れした神秘的な姿だ。
「すまない、蘭。君を具現化するには相当な霊力が必要なんだ。この世界ではなかなか厳しくてな。」
「ふーん。」と気まぐれな蘭は次に槙寿郎と願鉄へと顔を向ける。
「して、そのものたちを血祭りにすればいいのかえ?」
見た目とは裏腹に物騒な事を言い出す蘭に
「やめてくれ。槙寿郎は私の恩人でもある。願鉄は君も世話になっただろう?刀匠の方だよ。」
じーっと2人を見る蘭、そしてその威圧的な存在感に固唾を飲む2人。
「……あぁ!そうか。妙な仮面をつけているからわからんかった。我を丁寧に扱ってくれたな。美しいと褒めてもいた。物分かりのいい、腕のいい男じゃったわ。願鉄よ気に入った。槙寿郎も柊が世話になったな。」
敵ではないとわかるとここまで変わるのかカラカラと笑う蘭は愛らしい笑顔だ。
「蘭を具現化したのは日輪刀としてしっかり馴染んでるか確認したかったからだ。どうだ?鬼は斬れそうか?」
「問題ない。それより早く鬼のいるところへ行け。早く鬼を血祭りに上げたいのじゃ。」
「心配しなくても嫌っていうほど斬ってやるからもう少し我慢してくれ。」
全く、相変わらず君は血の気が多い。誰に似たのか。そうゴチる柊。
「そろそろ具現化も限界だ。この世界でも共に戦おう蘭。」
柔らかい笑顔でこくりと頷くと雪の結晶とともに消えていく。
「すまない、驚かせたな。あれが私の斬魄刀、氷雪の蘭だ。」
刀を鞘に収めると2人に居直る。
ガシッと願鉄が柊の両手を手に取る。
「素晴らしいっっっ!!刀が具現化してっっ!!更に会話ができるなんてっっっ!!!刀鍛冶としてっっ!!なんとも素晴らしい光景ですっっっ!!!まさに感無量っっっ!!」
涙をボロボロと流しながら熱弁する願鉄。