第1章 死神と鬼狩り
杏寿郎side
鬼の情報を掴み現場に着いた時、鬼とは違う違和感を感じた。
何かとてつもなく強い存在がそこにいる。
鬼自体は十二鬼月ではない。ただ双子の鬼らしく翻弄され取り逃してしまったらしいので、近くにいた俺が呼ばれたのだ。
鬼とは違う違和感の正体を確認するべく杏寿郎は山を駆けた。
「あれだな。」
1人そうごちながら、その存在に斬り込んだ。
刀で受け止められ、一旦距離を置くと杏寿郎は目を見開いた。
月明かりに照らされたその存在は今まで見たこともないほど
美しい人間の姿だった。
だが目を奪われたのは一瞬、鬼とはそう言う物だ。時には年老いた老人に。時には幼い子どもに。巧みに化けて人の優しさや誠実さにつけ込んで騙し肉を喰らう。
「君は何者だ!人間か!鬼か!鬼ならば、、、斬る!!」
彼はリーンというらしい。そして死神だとも。
「よもや!俺は死んだのか?!」
いつのまにか俺は死んで死神のお迎えが来たのか。
「杏寿郎。君は死んではいない。安心しろ。」
死神と言う言葉に「お迎え」の単語が頭をよぎったがどうやらまだ俺は死んでないらしい。
ふとリーンを見ると何やら難しい顔をして考え込んでいる。
「どうした?胸の傷が痛むのか?」
斬り合っている途中に気付いていたが、肩から腰にかけて着物がざっくりと切れていた。黒い着物で見ずらいが、大量の血の跡も。これが本人のものだとしたら相当な怪我だろう。立つことはおろか、刀を振るなんて辛いはずだ。
リーンはフルフルと首を横に振り、傷はない。と答える。
そして意を決したようにリーンは口を開いた。
「杏寿郎。いくつか質問してもいいか?」
「あぁ俺にわかる事ならなんでも聞いてくれ!全部答えよう!」
リーンの質問は本当に簡単な物だった。
今日の日付、鬼の存在がいつからあるのか。鬼殺隊の規模。
そして鬼の倒し方。
過去にも助けた人から質問攻めにされることは多かった。
だがこの手の質問はいつも決まって同じだった。
鬼とはなんなんだ。これからどうすればいい。どうしてもっと早く来てくれなかったのか。簡単に出せる答えなんて見つからない。
だがリーンの質問は初めてだった。
杏寿郎はその全ての質問に答えた。