第3章 死神と藤襲山
「選抜が終わったばかりで申し訳ないが、隊服と日輪刀について要望があるのだが。」
そう双子に伝えると
「かしこまりました。」パンパンと手を叩くと隠が現れた。
「こちらで承ります。」
柊はいくつか要望を隠に伝えると斬魄刀を隠に手渡す。
氷雪の蘭を日輪刀にすべく少し加工をしてもらう。
まぁ蘭の事だ。彼女も理解してくれるだろう。何しろ綺麗な姿とは裏腹に好戦的で血の気が多い性格だ。鬼を斬るためだと言えば喜んで改造されるはずだし、むしろこの世界で斬魄刀は必要ないから箪笥に仕舞う。と言えば泣いて怒るだろう。
「帰りは大丈夫ですか?代わりの日輪刀を貸し出すこともできますが。」
「いや、大丈夫だ。脇差がある。それに苦手だが奥の手もあるんでな。」
「そうですか。では後日隊服と出来上がった刀はご自宅まで届けられます。リーン様の刀はすでに出来上がっているものからの加工なので早く仕上がると思います。」
「ありがとう。楽しみに待ってるよ。」とふわりと笑いかける柊に隠は少し顔を赤くする。
では失礼する。と言って柊は新しく相棒となった鎹鴉とともに藤襲山を後にする。
杏寿郎の鎹鴉は『要』だったなぁ。
「なぁ君。君には名前はあるのか?」
帰り道の何もない畦道で柊は鴉に話しかける。
「名前、ないよー。君が、つけてー。僕の、名前ー」
オスかな?要とはまた違った雰囲気だな。
なんだか可愛らしい喋り方だ。
「ふむ。名付けなどしたことがないな。何が良いかな。」
しばらく考えたのち
「あやめ。、、はどうだろうか。菖蒲の花言葉は『信頼』なんだ。これから君とは常に一緒だ。私も君を信じる。だから君も私を信じてほしい。その想いを花言葉として君に、、最初の贈り物として捧げたい。オスの君には少し可愛らしすぎるかな?」
「あやめ、あやめ、気に入ったよー。僕の、名前、あやめー。リーン、ありがとー」
喜びの表現なのか柊の頭上を旋回しながら新たな自分の名前を繰り返す。
死神には地獄蝶よりも鴉の方がよく似合うかもな。
なんて事考えながら煉獄家への帰路を急ぐ。