第3章 死神と藤襲山
そろそろ時間だ。と玄関へと向かう。
杏寿郎と千寿郎が見送ってくれるらしい。
槙寿郎はまだ寝てるそうだ。彼の事だ、たかだが選別ごときで心配する必要もないし、無事に帰ってくる事が当たり前。そう言う腹づもりだから見送りなんて大層な事はしないのだろう。
「では、行ってくる。」
「「いってらっしゃい。」」
汽車を乗り継ぎ半日。更に歩いて半日。
丸一日かけて着いた山は聞き及んでいた通り山一面に藤の花が咲き誇る綺麗な場所だった。
集合場所に着くとすでに参加者とおぼしき人が20名ほどいる。
(なんだ、皆子どもではないか、、。そうか、彼らもきっと鬼に大切な者を奪われたのか、、)
千寿郎と年も変わらない子どもたちが闘志を燃やす瞳を宿している。
「それでは只今より鬼殺隊の最終選抜を行います。ーーー」
時期に日が暮れる。
少し開けた場所に出るとそこで静かに待ちわびる。
本来なら茂みに隠れて鬼から姿を隠し、奇襲するのが常套手段だが、柊は敢えて己自身を囮にし、襲いかかってきたところを斬る戦法にした。
理由は簡単。まず7日間と言う体力勝負。鬼が何体いるかもわからないのに闇雲に動き回っても後半に体力がもつかどうかわからない。なら向こうから来てくれた方が手っ取り早い。
二つ目、鬼の嗅覚の鋭さだ。稀血関係なく鬼は人間の匂いを辿る事ができるらしい。個体差もあるが茂みに隠れても嗅覚で見つかる確率の方がダントツに高い。
この山に血気術を使うほど強い鬼はいないと聞いたが、紛れ込んでる可能性が無いとはいいきれない。
(………来たっっ!!!)
その瞬間柊の前に鬼が現れた。
「咲き吹雪け 氷雪の蘭 一の舞」
切先が触れた鬼の胸元には氷の華が咲く。
そして脇差で頸を切り落とす。
「手応えはないな、、。」
夜の闇に柊の声が消えていく。
正直言って拍子抜けだった。
もっと過酷で次々と鬼が襲いかかってくるものだと思っていたが、山自体が広いためか、逃げ回る子どもたちの方へと分散されるためか柊の下にくる鬼は結局6日間で4体しか来なかった。いずれも一瞬で無に帰したが。
そして7日目の最後の夜の帳が下りるーーーー。