第3章 死神と藤襲山
まだ夜も開け切っていない暁色の空の時間に柊は目覚めた。
一緒に寝たはずの杏寿郎はもういない。だが反対側の布団にはまだ杏寿郎の温もりが残っている。
外に出ると庭で杏寿郎はすでに木刀で素振りを行っていた。
真剣な眼差しで汗をかく杏寿郎だが、ふと視線を感じたのかこちらを見つけて
「リーン!おはよう!!よく眠れたか?!」
元気よく挨拶をしてくれる。
「杏寿郎、おはよう。おかげさまでゆっくり寝れたよ。」
「、、、そうか。なら良かった!!!千寿郎が朝食の用意と弁当を作っているはずだ!俺もすぐに行く!」
「わかった。千寿郎にばかり作らせては心苦しいからな。手伝いに行く。」
一旦自室に戻り、身支度をする。
動きやすい武者袴に着替えると千寿郎のもとに向かう。
「リーンさん!おはようございます!もうすぐ朝食ができますよ!握り飯もすぐに用意しますね。」
「おはよう千寿郎。すまない。ほとんど君に任せてしまった。」
勝手元に入るともうほとんど終わっていた。
「味噌を溶かせばいいのか?」
「お願いします。僕は順番によそっていきますね」
そうこうしてるうちに食卓に豪華な朝食が並ぶ。
「千寿郎。気合いを入れたな」
照れながらはい!と答える姿に可愛らしいなぁと思いながら食事を始める。
「そういえば兄上は今日すごく早起きでしたがやはりリーンさんの事が心配でしたか?」
早朝に出発する柊に合わせていつもより早起きした千寿郎だが、それよりも早くに起きていた兄に対して問いかける。
「心配はしていない!!だが、、まぁなんとなく目が覚めただけだ!!」
「そうですか。でも兄上もこの後出発するんですから寝れる時にはしっかり寝てくださいね。今回は汽車を使うみたいですし移動中お休みになってください。」
「あぁ!気遣いありがとう!!」