第2章 死神と炎柱
「父上の事なんだがな。少し気難しい方で、もしかしたら酷い言葉をかけるかもしれないが気にしないでくれ。俺はいつか昔のように強く誇り高い父上に戻ってくれると信じている。」
なんでも煉獄槙寿郎という杏寿郎の父君は母君が亡くなられたから気を落とし、酒の量が増えたのだと言う。更にある日突然鬼殺隊を辞め、周りに当たり散らす様になってしまったとの事だ。
(突然愛する者を亡くして落ち込むのはわかる。だが当たり散らすのは何故だ?)
少し気になる事もあったが、私の生前の父親よりはマシだろう。そう考えながら煉獄家の門をくぐる。
「兄上!お帰りなさい!」
そう駆け寄ってきた少年を見て柊は杏寿郎とその少年の姿を見比べる。
「千寿郎!久方ぶりだな!変わりないか!」
「はい!勉学の方も順調で、試験でも高得点を維持できています!
あっ、、失礼しました。お客様がいるのでした。」
楽しそうに杏寿郎に話しかける少年は柊の姿を捉えるとピタッと止まり今しがたの自分の行動に恥ずかしさを覚えて、顔を赤く染めている。
「初めまして。今杏寿郎の元で指導を受けているリーンだ。」
「こちらこそご丁寧にありがとうございます。煉獄千寿郎です。手紙でリーンさんの事は聞いてましたが、こんな綺麗な方だとは聞いてませんでした。立ち話もなんですからどうぞ中へお上がりください!」
居間に通された柊は改めて2人を見比べる。そっくりだ。
杏寿郎の髪色は独特で珍しいがそれが2人もいるなんて。
お盆に湯呑みを乗せて戻ってきた千寿郎。
「お手紙だと日用品や着物を取りに来たのですよね?でも兄上の着物はもう入らないのでは?袴も裾が短いでしょう。」
事前に千寿郎に伝えていたみたいだが、肝心の主語が抜けていたようだ。
「俺が着る分ではなく、リーンの分だ。身一つで俺の元に来たから着替えの用意を失念していたのだ。」
半月の間替えの着物なしで過ごしていたことに驚く千寿郎。
だがそれだけではない。
「え!?リーンさんの分なのですか?!まさか兄上のお下がりを着させるおつもりですか?!」
バンっと食卓に手を置き、少し怒りを混ぜながら杏寿郎に詰め寄る。
「ん?体格は違うが、俺が柱になる前に着ていた物ならサイズも合うだろう?」そう言うことじゃない!
そう叫ぶ前に
ガラガラガラー。戸の音だ。