第2章 死神と炎柱
結局全ては食べきれなかったので残りは持ち帰り用にと包んでもらった。杏寿郎は全て食べていたが、、。すごい胃袋だ。
「まずは芋羊羹だな!俺はさつまいもが大好物なんだ!リーンにも好きになってほしい!」
「羊羹の名前は聞いた事があるが、芋が入ってるのは初めて聞いた。」
綺麗な黄金色の芋羊羹にスッと竹楊枝を入れる。柔らかい。一口サイズに分けて恐る恐る口に入れる。
その瞬間目が見開く。
少し怖かった。
味がしなかったらどうしよう。忌み子として生きてきた間も。死神として刀を振るってきた間も食事に美味しさを求めたことなんてなかった。杏寿郎が好きな物なのに私が食べる事ができないなんてきっと悲しむ。杏寿郎の悲しむ姿は見たくない。
だがそんな事は杞憂で終わる。食べた瞬間柊の口いっぱいに広がる甘味。さつまいものねっとりとした食感。
ーーー美味しいーーー
これが美味しいと言う事なのか、、。
ぽんっと杏寿郎の手が柊の頭に乗る。
「、、なんだ?」
「いや?なんでもないぞ」
ニコニコと笑いかける杏寿郎に
「子ども扱いはやめていただきたい。」そう照れ隠しのようにそっぽを向く柊に
「リーンは案外わかりやすいな。」
クックックッと笑う杏寿郎に思わず柊もふふっと笑う。
あぁ、こんなゆっくりと過ごすなんて初めてだ。
杏寿郎といると自分が自分じゃないような気がする。
だがそれを嫌だとは思わない。むしろ心が落ち着く気がする。
他にも自分があんこより白あんが好みな事。大福に果物が入ってるのが好きな事。その中でも苺が好きだった事。みたらしの甘塩っぱさは苦手だった事などが知れた。
久しぶりの甘味に満足した杏寿郎も上機嫌で次の目的地、煉獄家へと向かう。