第2章 死神と炎柱
「ここが甘味屋、、」
柊は入り口の前に立ちつくしている。
「リーン!何を突っ立っている!こっちだ!」
杏寿郎は腰掛けに座っていて隣の空いてるスペースに手をポンポンと叩き柊に座るように促す。
「女将!芋羊羹3つと団子を10本!お茶を2杯で頼む!」
「はいはい、いつものですね。」と馴染みの店なのだろう杏寿郎の注文を受け付ける。
「リーンは何にする?ここはどれもうまいぞ!」
そう言う杏寿郎に対して柊は
「えーっと、、、」
そう言って黙り込む。
「どうした?まさか甘味は苦手だったか?洋菓子の方が良かったか?」
自分が甘い物が食べたくて連れてきたが、相手もそうだとは限らない。無理やり連れてきた感もあって焦る杏寿郎。
「、、甘味は、、食べたことがない、、。品書きを見てもどんな物なのかわからないんだ、、。」
消えるような小さな声だった。更には必要最低限の栄養素だけ摂ればいいと言う考えだったので、食に関しても興味がなかったのだ。
生前は生きるために口に入る物ならなんでも食べた。味なんて関係ない。泥だろうとゴミだろうと胃を膨らませる事だけ考えていた。痛みもそうだが、味覚に関してもおそらく人より鈍感なんだろう。
「なんと!そうか、、。なら全部頼もう!!女将!すまないが先ほどの注文はキャンセルだ!代わりに全種類2つずつ持ってきてくれるか!」
「なっ!そんなに食べれないだろう!何種類あると思ってるんだ。」
同じ団子でもこし餡やら粒あんやら白あんなど、細かくすると全種類にすると30種以上はある。
「いつも食べたい物を聞いてもなんでもいいとしか答えてくれなかったのもそう言う事だったんだな。気付かなくてすまない。」
そう眉を下げて話す杏寿郎に柊は静かに首を横に振る。
「だが安心しろ!俺と共に過ごす間にリーンの好きな物を見つけて行こう!他にも好きな飲み物!好きな色!好きな動物!なんでもいい!リーンの好きを俺に教えてくれ!」
腕を組み、自信満々にそう宣言する杏寿郎。
「なら、、私は杏寿郎が好きだ。いつもありがとう。」
「ん゛ん゛ーー?!っフーっ、、。」
突然の思いがけない柊の告白。意図は違うだろうが、言われた側は驚き深呼吸ののち、口に手を当て真っ赤な顔を隠す杏寿郎だった。