第2章 死神と炎柱
杏寿郎side
リーンが来てから半月が経った。本人は修行の成果が出ないと言葉には出さないが悔しい思いをしているのだろう。
だが俺に言わせてみれば才能溢れる人材だ。
まず頭で理解できることができているし、たまに呼吸停止になってしまうがまさしくそれが全集中への一歩なのだ。
あとはコツさえ掴めばたちまち習得できるのだが。
「リーン、今日の午後は少し町に行ってみないか?ここに来てから根気詰めだっただろう。気分転換にどうだ?」
2週間毎日鍛錬。せっかくの異世界なんだ。それにこの世界の事も知ってほしいし、好きになってほしいと言う気持ちもあった。
「気分転換?そんな物必要ないだろう?私は時間が惜しいんだ。」
興味なし。とでも言うかのように断られる。
普段なら午後からは炎の呼吸と氷雪の蘭との真剣での打ち込み稽古が始まるのだが。
「俺は甘味が食べたい!!芋羊羹を所望する!!」
杏寿郎の大きな鶴の一声ならぬ煉獄の一声で柊も一緒に同行する事になった。
汗と砂でお互い汚れているので一度風呂に入り、着物に着替える。
杏寿郎は稽古着ではなく橙色と赤が織りなす鮮やかな着流しだ。
柊は以前着た藍色の鶴の長着に袴だ。
「すまん、そういえばリーンの着物がないな。ついでに呉服屋にでも寄るか?」
稽古漬けでリーンの生活用品を失念していた。と詫びる杏寿郎に、「別に構わない。着るものにこだわりはない。お下がりや質屋でもあればそれでいい。」
「なら帰りに俺の生家に寄ろう。そこにはもう着ない着物がある。弟にはまだ大きいから間のリーンなら丁度いいはずだ。」
いい案だろう!とニコニコと話す杏寿郎に対して、柊は(え、また男ものを着させようとしてる、、。)
そう言う趣味なのか?現世でも宝◯歌劇団というのがあったな。
またしてもお互いの勘違いは深まっていく。