第19章 死神と新年
杏寿郎side
父の部屋を出ると杏寿郎はニコニコと上機嫌だ。
父が伏せってからは新年の挨拶もほとんど無視。むしろ罵倒される事の方が多かった。
(父上が挨拶を交わしてくれた!これほど喜ばしい事はない!)
そして自室へ寄り着替えの着物と手拭いを持つと風呂場へと向かう。
脱衣所を開けると床に隊服が落ちている。
「ん?柊の隊服か?珍しいな脱ぎっぱなしなんて。」
(よっぽど疲れたのだろう。後で片付けてやろう。まぁ俺も最初の年末の任務は疲れ過ぎて倒れ込んでいたな。)
昔のことを思い出しながら浴室の扉を開ける。
すると浴槽の中にお湯に浸かりながら寝る柊の姿を見る。
「なっ!!柊っ?!」
杏寿郎は慌てて柊の肩を抱く。するとすでに冷え切った柊の体があった。
湯船のお湯も人肌ほどに下がっていて真冬には堪える温度だ。
「柊、柊!起きろ!こんなとこで寝るな!」
「ん…。ん?杏寿郎…?」
ぼやぁと目が合う。
杏寿郎はすぐに湯船のガスのスイッチを入れ追い焚きをかける。
「待ってろ、すぐに温まるから。全く…疲れているからといって湯船で寝るんじゃない!こんなに冷えているではないか!」
杏寿郎は柊の肩を摩る。
「すまない…。うっかり寝てしまった…。」
柊はまだウトウトとしているようだ。
杏寿郎は体を流すと柊が入る湯船に一緒になって入る。
柊の後ろに陣取り、後ろから抱きしめるように座る。
「まだぬるいな…。」
「杏寿郎の体温が背中に伝わって私はあったかいな。」
「後でお仕置きが必要か?」
「それは嬉しいご褒美の間違いでは?」
(ん゛ん゛っ!!よもや。柊がどんどんいやらしくなってきたな…。俺のせいか…?いや、宇髄も…。)
杏寿郎の葛藤に気付かず柊は上機嫌で杏寿郎の温もりを満喫している。