第18章 死神と豪華客船
翌日、柊が目が覚めると杏寿郎がぎゅっと後ろから抱きしめられていた。
「ん…そうか…あの後寝てしまったのか…。」
体に感じる杏寿郎の温もりが直に感じ安心感を覚える。
柊はモゾモゾと体を動かし、杏寿郎の方へ向きを変える。
そしてそっと杏寿郎の頬に手を触れると柔らかく微笑む。
「杏寿郎…。そばにいてくれてありがとう…。好きだ。」
小さく呟く柊。
柊が手を離そうとするとパシッと掴まれる。
「柊。そう言うことは俺が起きている時に言ってくれないか?」
「お、起きていたのか?」
「朝から愛い事を言ってくれるではないか。柊、もう一度言ってくれないか?」
今度は杏寿郎が柊の頬に触れ囁く。
柊は抱擁や視線、笑顔で杏寿郎の事を大好きだと態度で示しているが、あまり言葉で伝えることは少ない。
そんな柊が自分から『好きだ』と言ってくれた事が嬉しくて杏寿郎は目を合わせてもう一度聞きたいとお願いする。
「…聞いていたのだろう?なら…十分だろ…?」
顔を赤く染め、視線を逸らして誤魔化そうとする柊が一層可愛いと感じてしまう杏寿郎。
(ん゛ん゛っ!愛いぃぃっ!!)
「あっ!杏寿郎!任務の報告は?」
柊が思い出したかのように起き上がると杏寿郎が横になりながら柊の膝をポンポンと安心させるように手を置く。
「それなら宇髄がいち早く報告してくれた。国外に鬼の脅威が漏れ出す危険は免れた。そう伝えてくれたよ。」
「…。」ぎゅっと唇を噛み締め考え込む柊に杏寿郎は柊と同じように座り、ぎゅっと抱きしめる。
「船の機械室で…何があったか…聞いてもいいか?」
「ああ、だが…天元にも…そしてお館様にも聞いてほしい…。」
「わかった。午後に時間を作ってもらうように掛け合ってみよう。」
杏寿郎は要に御館様と天元宛に二通の手紙をくくりつけると空に放つ。
「まずは腹ごしらえだな。と言うよりもまず服を着なければ。」
柊は適当に巻きつけられた杏寿郎の着物一枚だ。かろうじて肩に引っかかっているだけで、ほとんど裸に近い。
柊は杏寿郎の着物を着直すと自室へと向かい、身支度を整えに行った。