第18章 死神と豪華客船
(落ち着け…、返答を間違えるな。その瞬間私の命はない。)
柊はゴクリと唾を飲み込むと無惨に話しかける。
「この船に乗っていた2匹の鬼は君の意に反した。だから手を下しに来たのか?」
「ああ。私はね不変を好むんだよ。だがこいつらは国外へ行こうとした。私の支配から逃げるため…。そんな事、私が許可すると思うか?」
「支配…。支配していないと不安なのか?」
「何?貴様…。私を侮辱するつもりか?」
「侮辱も何も、私は鬼に対して何も思わない。ただ、討伐するだけだ。」
「まるで私がその辺の鬼と同じだと言っているように聞こえるが?」
「そう、聞こえたのならすまない。なんせ私にとって君もさっきのバカな鬼も同じ鬼だからな。」
「くっくっくっ…はーっはっはっ!私にそこまで言うとはよほど死にたいらしいな。…だが、貴様に興味が湧いた。貴様が何者なのか、どこから来たのか、次の楽しみに取っておこう。」
そういうと無惨はポンっと琴の音とともに姿を消した。
「はぁーー。はぁ、はぁ。」
柊は緊張の糸が切れたのかその場にへたり込む。
(何も…手も足も出なかった…。情けない…。)
手足の震えが収まるとゆっくりと元のパーティ会場へと戻っていく。
「柊!大丈夫か?顔色が悪いぞ。」
「ああ、大丈夫だ。少し外の空気を吸ってくる。」
杏寿郎が駆け寄ると柊は甲板へと出る。
船の手すりを握り、海風を体に感じる。
「うっ、ふっ…うぅっ…。」
声を殺し涙を流す柊。この涙は恐怖なのか、悔しさなのか、安堵なのか…。
「柊…。」
杏寿郎は上着を柊の肩にかけ、ぎゅっと抱きしめる。
柊は何があったのか聞かない杏寿郎に優しさを感じ、そして同時に罪悪感も感じる。
無惨と接触したのに。やつと対面したのは過去にたった1人。私が動けなかったせいで…そんな思いが湧き出る。
「鬼は倒したんだろ?救護室にいた人達も無事だ。宇髄が確認してそれぞれ持ち場に戻ったようだ。」
「……。」
会場ではダンスタイムに入ったようだ。賑やかな音楽が甲板にも聞こえてくる。