第18章 死神と豪華客船
柊は救護室に寝ている人達をネズミに任せる。
そのうち天元が来るだろう。
もう1匹の鬼を探さなければ。柊は船の一番下、ボイラー室へと向かう。
蒸気が吹き出し、真冬にも関わらず熱気が籠る場所へとたどり着く。
油の匂いとは別に鉄の…血の匂いが混じっているようだ。
カツンカツンと歩き進めると前方に人影がうずくまっている。
いや、鬼が肉の塊に貪り付いている姿だ。
「貴様が頭の悪い方の鬼だな。」
「くちゃ…ぐちょり…ボリっ…ああん?」
こっちを振り向く鬼は目が一つで口が二つ。両手を使って二つの口に肉を詰め込んでいた。
「んだよ。なんで鬼狩りが船に乗ってんだよ。海外に逃げたら人間食べ放題だって言ったくせによぉ。」
「逃げる?国外の人間を狙い海外進出を狙っているのではないのか?鬼狩りから逃げるとは鬼の名が泣くぞ?」
「はっ!誰がテメェらみたいな鬼狩りから逃げるかよ!俺が逃げたいのは……っ!!!!…な、なんで…」
急に怯え出した鬼、尋常じゃないほど汗が吹き出し震えている。
柊もゾクっと後ろに何かの気配を感じ、振り向く。
だがすでにそれは柊を通り過ぎ、鬼の目の前へ移動していた。
(っ!!早いっ!!)
「あ、あああ、、違うんです、、これは、、別に逃げようとしたわけじゃ、、、」
「…。」
男は鬼の額に指を刺し、そして鬼は破裂するように死んだ。
(な、なんだ?何故鬼は死んだ?日輪刀ではないのに…。こいつは何者だ?斬らなければ…!だが…体が動かないっ!動けっ!動けぇっ!)
「はっ、はぁっ、はっ…」
呼吸も忘れるほど柊は恐怖で体が動かないでいた。
男は柊を見ると眉を動かし興味をもつ。
「ほぉ、貴様、ただの人間ではないな?面白い気配がする。刀を抜かなかった事を褒めてやろう。もし刀を抜き、その刃を向けた瞬間、貴様の頸と胴は切り離されていただろう。」
この威圧感、恐怖、以前にも感じた。愛染だ。愛染が崩玉と一体化し、虚化したあの感覚に似ているんだ。自分とはかけ離れた絶対的な悪。神にも近い虚無感に。
「お、前は…。鬼舞辻…無惨か…?」
「そうだ。だとしたらどうする?」
無惨はこちらを見下すように答える。