第17章 死神と潜入捜査
「謝らないでくれ。これは俺の問題なんだ…。綺麗に着飾った柊の隣に立ちたい。そんな俺のささやかなわがままなんだ…。」
「杏寿郎…。」
頬を赤く染め見つめ合う2人。それを白い目で見る槙寿朗。
「お前ら…頼むから俺が居ないとこでやれ…。」
ーーーーーーーーーーー
そして船上パーティ当日。
午後の3時から乗船開始し、5時に出港。
立食式のパーティが始まり夜の10時には港に戻る。そこで日本人の殆どが船を降りるが、外国人はそのまま乗船し、国へと旅立つ。
つまり、鬼が潜伏している場合、夜10時までにそれらを討伐しなければならない。
柊と杏寿郎は隠が運転する自動車に乗って船がある横浜港へと到着する。
「後藤、いつもながらありがとう。」
「柊、口調。淑女だろう?」
「う、…後藤様、お見送り感謝いたしますわ。」
潜入捜査ではレディになりきらなければならない。杏寿郎が言葉遣いを指摘すると柊はすぐに言い直す。
いつも武士のように男っぽい喋り方の柊がふんわりと笑いかけ話す様はまさに淑女。そして雪白姫のようだ。
「いや、これも仕事だしよ…別に感謝なんて…。」
顔を赤くして照れるとふと柊の後ろに立つ杏寿郎と目が合う。その目は後藤を射殺すように鋭く『惚れたら殺す』と言ってるようだ。
「っ!!!では俺はこれで!!港周辺を警戒しつつ、夜10時にお迎えに来ます!!」
そそくさと自動車に乗ると勢いよく発進していった。
「お気をつけて〜。??」
急変した後藤の態度に疑問を覚えつつ「なんだったんだ?」と杏寿郎に聞いても「さぁな。」としか返ってこない。
「行こう。柊。」
杏寿郎が腕を差し出すと柊はそれを取り、杏寿郎のエスコートで船へと乗船する。