第17章 死神と潜入捜査
情事の後、3人は軽く体を清めると散らかした部屋を掃除する。と言っても柊は腰を痛めたので男2人が働いている。
ドレスもタキシードもウェイター服も潜入調査で使用するのに大変汚してしまった。
天元が「洗えばいいだろ。」と言うが、どこで?家?精液まみれの服を?煉獄家は無理!との事で宇髄家で洗ってもらう事にした。今は奥様方が不在のため天元が洗う事になるだろう。
パーティ当日まで怪我や不測の事態に備え3人は任務を極力減らされた。その代わりパーティで踊るダンスの練習と、英会話の勉強をするようにと御館様からのお達しが来た。
煉獄家に戻ると柊と杏寿郎は3週間後に迫った船上パーティに向けて猛特訓が始まる。英語は千寿郎が学校で学んでいたので彼に教わる。そしてダンスに至っては意外にも槙寿朗が指導してくれたのだ。年の功と言うべきかそのステップは軽やかで煉獄家の当主として気品ある佇まいだ。
柊は槙寿朗になんとか及第点をもらったが、本番はそこに高いヒールを履かなければならない。日常から慣れるようにと毎日履いて特訓している。
問題は杏寿郎だ。英語はまぁ良しとしてダンスが壊滅的だった。動きが硬く、何度も練習相手の槙寿朗や千寿郎の足を踏むのだ。足元に集中し過ぎて壁にぶつかる事も。
「杏寿郎…槙寿朗に代わってもらうか?」
壊滅的なセンスの無さに打ちのめされ落ち込む杏寿郎に柊が控えめに提案する。
「そうだ!お前には才能がない!無様な姿を世間に晒す前に辞退しろ。俺もまだまだ現役で通るだろ?代わってやってもいいぞ?」
ニマニマと笑う槙寿朗に柊は呟く
「槙寿朗…、君はパーティに行きたいだけだろ?」
「…そんな事はない…。」と目を逸らす槙寿朗。
そんな2人のやりとりを尻目にグッと拳を握りしめる杏寿郎。
「いや!その申し出は断る!!俺は決して逃げ出しはしない!一度受けたからには最後まで全うして見せる!」
「…すまない。そうだな、杏寿郎はそう言う男だな。君の矜持を傷つけるような真似をしてしまってすまない…。」
申し訳なさそうに謝る柊に杏寿郎は慌てて駆け寄り手を握る。