第16章 (短編)呉服屋での話
「杏寿郎、この◯◯屋ってなんの店だ?」
「それは仕立て屋だ。道着や着物の修復を頼んでいた。多分俺のだ。すぐに破いてしまう。ちょっとしたほつれなら千寿郎が縫ってくれるのだが、それ以上になると専門に任せてる。」
仕立て屋と聞いてぴくっと柊が反応する。
「今までは女将が1人で切り盛りしていたのだがな、最近娘に代替わりしたようで。なんでも海外へ洋裁の勉強までしたそうだ。新しい若い客が増えて忙しくなったと女将が言っていたらしい。」
「へ、へぇ…。」
間違いない、柊が下着を注文した店だ。
時すでに遅く、2人は店の目の前にいる。
「ごめんください。」
杏寿郎が店の中に入って行く。
「いらっしゃい!煉獄様!お兄様が来られるのはお久しぶりですね!」
「あぁ、いつも弟に任せっきりになってしまって不甲斐ない。道着を受け取りに来た。」
「はい。できてますよ。ご確認くださいませ。」
広げて修繕箇所を確認すると
「うむ!!さすがだ!いつもどおり!ここに頼んで間違いないな!!」
大きい声で納得する。
柊はというと体の大きな杏寿郎の後ろに隠れるように気配を消す。
「柊?どうした?何故隠れる?」
若女将が包んできます。と店の奥に入ると杏寿郎が柊に声をかける。
「いや、ちょっと…先にーー」
先に帰る。そう言いかけたとこで
「お待たせしましたー。」と戻ってくる若女将。
「あら?お連れ様?煉獄様が大きくて影になっておられたのですね!失礼しました!」と顔を横にひょこっと覗き込むと見たことのある髪色とシルエット。
「あら?リーン様!」
「む、柊、来たことがあったのか?」
「えぇ!先月にお越しいただき、有意義なアイデアを頂きました!商品できてますよ!」
そう言ってまたしても店の奥へと取りに行く。
「柊、なぜ黙ってたんだ?」
「……ちょっと…。」
「今見ます?」
「いや、いい!帰って確認する。」
「何を注文したんだ?」
「杏寿郎…。これは…その…「下着ですぅ!」
痺れを切らした若女将が代わりに答える。
「し、下着?!すまん、そうとは知らずズケズケと…。」