第16章 (短編)呉服屋での話
ーーーそして今ーーー
「ここが女将言っていた店か…。」
商店街の奥に佇む一軒のお店。その看板には『お直し・仕立て』の文字。他にも『リメイク』や『洋服承ります。』と言う手書きの貼り紙もある。
柊の手には今はもう一枚しか手元にないパンティを持ち(ちゃんと洗ってる)お店の暖簾をくぐる。
「ごめんください。」
「はーい!いらっしゃいませ!」
奥から明るい声で現れたのはまだ20代後半ほどの女性だった。
こじんまりとした店内にはハギレで作った小物や飾り、洋服も何点か展示されていた。
カウンターの奥は作業場になっているのだろう立派なミシンや生地、道具などが揃っている。
「うちは修理や仕立て直しがメインですよ。他にもオーダーメイドで洋服なんかも作れます。」
「見てもらいたい物があって…これなんだが。」
そう言って風呂敷に包んだ下着を若女将に見せる。
「お客様…これは…?」
「ごほんっ、これは…その下着だ。もちろん!ちゃんと洗ってる。その…似たような物を作れるだろうか?」
自分の下着を他人に見せるほど恥ずかしい事はない。それが同性だとしても。
「これが!下着?!え?すごい!こんな面積が少ないなんて!!」
ばっと下着を手に取り上に掲げてキラキラと目を輝かせて興奮を隠せないようだ。
「ちょっと履いて見せてもらっても?」
柊の手を握りキラキラと目を見つめて懇願してくる若女将に若干引きながら頷くしかなかった。
奥の作業場へと移り、柊は袴を脱ぎ、下着を履くと若女将に見せる。
「す、凄い…感動です!こんな扇状的なデザイン!キャー!創作意欲がっ!湧き出ますぅ!!」
そう言って若女将は柊を見ながらノートにデザイン画を書き込んでいく。
「あー、服、着てもいいかな…?」
「だめです!まだだめですよー!!」
しばらくして落ち着きを取り戻した若女将は柊に謝り倒した。
「気にしなくて大丈夫だから。」
その後もデザインに関して過去に見たことがある機能を提案する。
レース生地や紐で横をくくるデザイン。そしてブラジャーの存在も伝えると私が思い出す説明だけで見事にノートの中に現代の下着セットが蘇ったのだ。