第15章 死神と科戸の風
不死川は2人の接吻から目を離せないでいた。
どれくらいの時間だったのだろう。いや、実際にはたった数分だったが、初めて他人の接吻を目撃した不死川にとっては長く感じる時間だった。
天元と柊はゆっくりと口を離す。
どちらともわからない透明の糸が繋がり、ぷつっと切れる。
柊の口元にはだらしなく唾液が流れている。
「はあ…、はぁ…。ん…。天元…助かったよ…ありがとう…。」
「どーいたしまして。派手に間に合って良かった。」
「それはそうと、なぜ君は私の体の事を知っているんだ?杏寿郎にも言っていない。知ってるのはしのぶと御館様のみだそ。」
調子が戻った柊は天元を睨みながら尋問する。
「おいおい俺様は元忍だぜ!その俺に地味な隠し事なんてできると思ってるのかよ?」
「…はぁー。しのぶにカルテの管理を天元対策してもらわないとな。」
天元に抱き抱えられていた柊は力を戻し、自分で立ち上がる。そして顔を真っ赤にしてる不死川の方へと向く。
「…見苦しいところを見せてしまってすまない。この事はあまり知られたくないのだ。できたら今見た事は黙っててもらえたら助かる。」
「っ俺が人にベラベラ喋る男に見えんのかよっ!!」
「いや、そう言う意味ではないのだが…。すまない、怒るのも無理はないな。」
「別に…怒ってるわけじゃーー」
そう言うと天元が不死川の肩を組む。
「んだよ照れてんのか?もしかして俺たちがチューしてんの見て興奮しちゃった?」
「あ゛?!ちげぇよ!!っつーかなんで俺がこんなやつに!」
そう言って不死川は柊を指差して睨みつける。
するとさっきまでの光景が脳に再生される。
頬染めて上がる息遣い、口元から流れる唾液、漏れる声。
カァァァと顔が熱くなる。
「とにかく!俺に男色の趣味はねぇ!別に女を取っ替え引っ替えする趣味もねぇが…、お、俺は…違う、こんな、…男を好きになるなんて…ありえねえ…、」
段々と小さくなる声に柊は「??」と首を傾げる。
耳のいい天元には丸聞こえだが。
その首を傾げる柊の仕草を見た不死川は
「っか!」「「か?」」
(可愛いなんて言えるかよ!)
「か、勘違いするなよっ!くそがっ!」
そう言って猛スピードで走っていった。