第15章 死神と科戸の風
姿を消した不死川を見送った2人は顔を見合わせる。
「彼は何を怒ってたんだ?」
「っくっくっ、あーっはっはっ!」
ゲラゲラと腹を抱えて笑う天元に柊は困ったように口を尖らせる。
「あー、おもしれっ!あいつ姫さんのこと男だと思ってたぜ!」
「なに?!…だとすると彼は私たちが男同士で接吻をしたと思っているのか…。よし、訂正しに行こう!」
「まぁまてよ。面白えからそのまま勘違いさせとこうぜ。女だって言わなくてもいいけど、男だと嘘つかなくていいから。な?」
「そんな戯言…面白いのか?」
「あぁ、面白い!」
まぁ、杏寿郎の時も勘違いしたままだったし、鬼殺隊に男も女も関係ない。天元が楽しそうならわざわざ水を差す事もないだろう。そう思い柊は承諾した。
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自分の屋敷に戻った不死川は今回の報告書をまとめていた。
だが時折脳裏に映るのはリーンと宇髄の接吻の光景。
「ぐあぁぁぁ!あああああ!忘れろっ!忘れろぉぉ!」
頭を掻きむしり悶絶する姿がしばらく続き、かと思えば隊士を見かけては憂さ晴らしのように地獄の打ち込み稽古へと連れて行かれる姿があったとか。
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「おかえり柊!」
「杏寿郎!ただいま。」
いつものように抱擁して帰宅の喜びを分かち合う。
「…お前らいっつもこんなことしてんの?」
「なんだ宇髄!君もいたのか!」
「最初からいましたけど?」
「柊さん!お帰りなさい!お風呂沸いてます!」
千寿郎が笑顔で声をかけてくる。
「千寿郎もただいま。ありがとう。先に貰うよ。」
柊が風呂へと向かうとその後ろを天元が着いていく。
杏寿郎がーーガシッーーっとその腕を掴む。
「…宇髄?」「ははは。冗談だって。」
「千寿郎も父上もいるのだ。」
「…杏寿郎クン?それは家族がいない日ならイイって事?」
天元の目つきが変わる。
「む…。まぁ…。柊がいいなら…だが。」
天元がニヤッと笑うと。
「今日は帰るわ!また今度派手に楽しもうぜ!あぁあと、不死川と一緒だったんだけどよ、派手に面白え事になってるからそのままにしといてくれ!じゃぁな!」
「不死川…?はぁー、柊は男をどれだけ魅了するんだ…。」
杏寿郎の声は誰が聞くでもなく空へ消えていった。