第14章 死神と憂鬱
もちろん御館様は2人をすぐさま除隊させた。
しかも御館様も顔には出さないが内心怒り心頭だったご様子で、鬼殺隊を除隊されると行く宛がないだろう。次の職をと紹介した。だがその職というのは海軍だった。
それを聞いた2人の怯える顔は見ものだったよ。と御館様から手紙をいただいたそうで、鬼殺隊は政府の非公認組織だが、認知はされている。要人の中には鬼殺隊にゆかりのある方々もいる。世の混乱を避けるため非公認だが、裏では何かと融通がきくのだ。
煮るなり焼くなり好きにしてくれと2人を差し出すと海軍は喜んで引き取ってくれた。
2人がその後どうなったかは聞いていない。
槙寿朗は最後まで話すと柊に向かい手を床に着ける。
「柊。すまない。不快な思いをさせてしまった。もちろん部屋は念入りに掃除をしたし、布団も買いなおしてある。
失礼だと思ったが、箪笥の中も確認した。着物は全て洗い直してあるし、嫌なら全て捨てて新しく買い直す。下着については俺と千寿郎では知識不足でどうしたらいいかわからん。ただ、汚されたものは燃やしてある。部屋についても嫌なら移動しよう。喜んで手伝う。」
「やめてくれ槙寿朗。怒ってないし、槙寿朗が謝る事ではない。十分にしてくれたよ。御館様の采配も見事だ。着物は洗ってくれたんだろ?捨てるなんてできない。何よりあれは瑠火殿の形見も入っているんだ。下着は…まだあるから大丈夫だ。」
槙寿朗の背中に手を置き、ポンポンと優しく撫でる。
「だよな?杏寿郎。」
同意を求めるように彼を見ると腕を組み怒りで顔全体を赤くし、青筋をこれでもかというくらい立たせて目を見開いてる杏寿郎がいた。
どうやら怒りで声も出せないようだ。
「とにかく槙寿朗と千寿郎のおかげでその日のうちに事が済んだ。2人がいなければ今日私が帰宅するまで気付かぬままだったな。」
自分で言っといてなんだが部屋を開けた瞬間知らぬ男の体液まみれの自室だったらと思うとゾッとした。
気を取り戻し、杏寿郎へと体を向ける。
「杏寿郎も、私のために怒ってくれるのは嬉しいが、人を傷付けてまではしてほしくないんだ。私は杏寿郎に笑っててほしい。いつもの笑顔に戻ってくれ。だめか?」