第14章 死神と憂鬱
コテンと首を傾げる柊に杏寿郎は見開いた目を閉じ、そしてぐわっと見開く。
「だめじゃない!!(愛いっ!)柊がそう言うなら俺も何も言うまい!(愛いっ!)俺も君が笑顔ならそれだけで満足だ!(好きだっ!)」
「ふふ。よかった。そうだ芋羊羹を帰る途中買ってきたんだ。みんなで食べよう。千寿郎!お茶を用意するから手伝ってくれ。」
そう言って柊は自室いる弟を呼びに居間から飛び出していった。
父と長男だけになると槙寿朗が先に話しかける。
「お前、チョロすぎやしないか?」
「父上こそ。俺に刀を寄越せだとか、暴れたら凍らせろとか言っていましたが、まるッとご自身の事でしょう。」
「煉獄家の男は惚れた女には弱いんだ。」
「ですね。……惚れたぁ?まさか父上…柊の事を…?」
「バカ!勘違いするな!あくまでも1人の人間としてだ!恋慕ではないから安心しろ!どっちかと言うと娘みたいなもんだ。まぁそのうちそうなる日も近いかもしれんなぁ。」
ニヤニヤと杏寿郎に笑いかける。
「え?柊を養子に迎えるのですか?」
「おまっ…。ほんとこう言う話になると察しが悪いな…。」
はぁ、とため息をつく槙寿朗に疑問を持つが、柊が持ってきた芋羊羹に心を奪われ、一瞬にして父との会話は彼の頭から消えていった。