第14章 死神と憂鬱
「すまない千寿郎。まさかここまで負担になってるとは思っても見なかった。」
夕食後、柊は今の隊士たちの現状を杏寿郎がほっとくわけがないと思い確認するとやはり気づいてなかったようで。
「最近長期の任務が多くてあまり家に帰れてなかった。いや、言い訳だな。可愛い千寿郎が困っているのになにもできず、不甲斐ない!」
「兄上は悪くないです!僕が勝手にしてる事なので。」
「だが初めの頃は上手くやっていただろう?母屋を立ち入り禁止にしてからだな、手が回らなくなったのは。」
そういえば槙寿朗もそんな事を言っていたな。他人事のように考えていると槙寿朗と千寿郎の動きが止まる。何か隠してるようだ。
「なんだ?何かあったのか?まさか隊士の中に泥棒のようなマネをする奴がいたか?」
杏寿郎が詰め寄る。
「泥棒ではないのですが…。」
何やら言いにくそうな様子の千寿郎を見るとチラチラと目が合う。
「ん?私?その間私は煉獄家には不在だからわからんぞ?」
「俺と千寿郎がいない間に「父上!!」槙寿朗が話しだすとそれを遮るように千寿郎が大きい声を出す。
千寿郎が大きい声を出すのは珍しい。ましてや父の言葉を遮るなんて。何やら大きな問題が起きていたのではないかと杏寿郎と柊は心配になる。
「兄上が聞くと絶対怒ります!当人である柊さんには伝えるべきですが、兄上はダメです!」
自分の名前が出てきて他人事ではなくなってしまったようで、柊は大丈夫だから、と千寿郎に話を促す。
それでも千寿郎は言いづらそうなので柊はもう1人の真相を知る槙寿朗に目配せをする。
「はぁ…。…千寿郎は部屋に戻ってなさい。」
涙ぐむ次男にはあまり聞かせたくない話なのか。
「杏寿郎、刀を寄越せ。あと柊、杏寿郎が怒りで我を忘れたら凍らしてくれ。」
苦笑いをして分かったと答える。
杏寿郎に『怒らずに聞いてくれ。』と言わないのは怒る前提の話なのだろう。
念入りに杏寿郎の怒り対策を施すと槙寿朗はゆっくりと話し出す。