第1章 死神と鬼狩り
柊は杏寿郎が女中に用意してもらったであろう朝食と着物を受け取る。
「君の死覇装だったか?袴だったから同じような物にしてもらった。」
手渡されたものはいわゆる武者袴で、長着は深い藍色に鶴の刺繍が袖口にあしらわれていて、袴は淡い薄藍色だった。
シンプルだが生地はとても良いものだと見て取れる。
そしてまたしても男物だった。
まぁ女性物の袴を常備する事もないだろう。年頃の娘が鬼殺隊の詰め所にいるとは限らないしな。
どっちにしろ普段から死覇装か道着で過ごすことが多いため動きやすい武者袴を用意してくれたのはありがたい。それに、着物を着た事なんて、、あったか、、?
そう言えば養子に引き取られた直後はおじいさまが何着か可愛らしい着物を着させてくれたが、真央霊術院に入ってからは着る機会は無くなったな。
「杏寿郎、ありがとう。隠や女中の方達にも感謝を伝えといてくれ。」
素直に着物を受け取り、2人して朝食にありついた。
身支度を終え、詰め所を出る。
「これから俺の屋敷に向かう!そこでしばらく俺と稽古だ!!」
どうやらお館様からの返事によると、私は鬼殺隊としてまだ未熟らしい。というのも、鬼を斬るにはまず日輪刀が必要で、さらにはそれぞれに合った呼吸を極めなければその刀の力を発揮できないらしい。
杏寿郎が言うにはおそらく私は『水の呼吸』もしくはその派生として『雪の呼吸』になる可能性が高く、杏寿郎の『炎の呼吸』とは相性が悪い。
だが、鬼殺隊士の必須技能である『全集中の呼吸』は杏寿郎から教えてもらうように。との事。更に優れた隊士は『全集中の呼吸・常中』を極めているらしい。
まず、全集中を習得してから水の呼吸の使い手から教えを乞う。と言うのが今後の流れのようだ。
「リーンは剣術については俺から教えることはないからな。どちらかと言うと俺が教えてもらいたいくらいだ!」
ニカッと笑う杏寿郎に対して
「そんな事はない。お互いの能力なしで戦えば杏寿郎には負けるだろう。私は早さには自信があるが、杏寿郎のように力はない。あの力強く燃えるような美しい剣技には目を見張ったよ。100年以上鍛錬してやっとここまできた。たった数十年生きた杏寿郎があそこまでの力を手にするには相当な努力と鍛錬を重ねてきたんだろう?」
褒め言葉のつもりが逆に褒め返され、杏寿郎は耳を赤く染めるのだった。
