第11章 死神と熱
朝方、義勇はモゾモゾと腕の中で眠る柊に触れていた。
「…ふ…はぁ…はぁ…」
「柊…。……柊?」
パッと布団をまくり、柊の顔を見ると顔が赤く、額に汗を浮かべ呼吸の息も荒い。
額に手を当てると燃えるように熱くなっている。
「柊!大丈夫か?」
焦る義勇はすぐさま濡らした手拭いと飲み水を取りに行く。
口元に湯呑みを当てるが、どうやら意識が朦朧としている。
義勇は自分で湯呑みの水を口に含むと柊の唇へと合わせて水を移す。柊の喉がゴクリと動いたのを確認すると溢れ濡れた口端を親指で拭う。
ゆっくりと目を開いた柊に義勇は困ったように微笑む。
「柊。大丈夫だ。すぐに蝶屋敷に連れていくから。」
「…あぁ。すまない…。」
浴衣の上から羽織を着させ、義勇も隊服に着替えると柊を背中に抱えて、まだ日も昇らない町を駆け出した。
ーーーーーーーーーーーー
「胡蝶!!いるか?!急患だ!!」
蝶屋敷へ入ると奥からしのぶが顔を出す。
「冨岡さん?こんな早朝に…騒がしいですよ?」
大きな声でしのぶを呼ぶ義勇を嗜めようと声をかけるが、
彼の背中で眠る柊を見ると顔付きが変わる。
「柊さん?!…っとにかくこちらへ!」
そう言うと診察室へと誘導する。
柊を視察台に寝かせると
「何があったんですか?」
「朝方、息が荒くなっていて気がついたらこうなっていた。」
「それまで咳や喉の痛みなどは訴えていませんでした?」
「いや、ないと思う。そもそも柊は不調などあまり言わないからな。」
「…そうですね。」
着物の合わせに手を当てるとしのぶは手を止める。
「冨岡さん?ちょっと離れてもらえますぅ?」
「…何故だ?」
「胸の音を聞くためです。」
「…?」
「柊さんの着物を開くんです!…見たいんですか?やっぱりむっつりさんでした?」
そこまで言うと義勇は大人しく部屋の端まで移動し、しのぶの背中で柊が見えない位置に立つ。
(全く…冨岡さんは本当に空気が読めませんね。)
柊の胸を開くとしのぶは目を見開き驚きの声を上げる。
「っっなっ!!」