第10章 死神と炎の音
耳に響く声はもちろん柊はその言葉の内容にも反応した。
『奥に触れる』勿論思い出すのは杏寿郎との昨夜の行為だ。
天元が柊の耳元で何かを囁き、そして柊が甘い声を出した。それを目の当たりにした杏寿郎はすぐさま天元に抱かれている腕から取り返そうと彼女の肩に手を伸ばす。
だが天元はガッチリと柊を掴んで離さない。
柊は頭ひとつふたつ分大きい大の男に挟まれ身動きが取れなくなっていた。
柊の頭上ではバチバチと音が鳴っているんじゃないかと思うくらい2人は睨み合っている。
「宇髄、手を離せ。柊が嫌がってるだろ。」
「手を離すのは煉獄のほうだろ?別に夫婦でもなければ恋仲ってわけでもないんだろ?それにみんなに愛されるべきって言ったのお前じゃん。」
「杏寿郎…、」困った顔で見上げる柊はとても愛らしい。じゃないっ!!
「煉獄よぉ、何もお前から姫さんを奪おうってわけじゃないんだぜ?『一緒に』だ。俺たち2人で、姫さんをいっぱい可愛がってやろうって話なんだぜ?悪くないだろ?」
ピクッと杏寿郎のこめかみが動く。
「…一緒に…?…そんな事…。」目が揺らぐ杏寿郎に天元が畳み掛ける。
「可愛い姫さんがイくところ、客観的に見たくないか?2人なら姫さんが派手に壊れるくらい何度もできるんだぜ。」
そこまで言うと杏寿郎は目を見開き固唾を飲む。
「だが…柊が嫌がることはしたくない。」
「ふーん。じゃぁちょっとだけ味見な。耳の同時攻め。これ嫌がったらこの話は地味に終わりだ。」
こそこそと男2人で話終わると天元がニコッと柊に笑いかける。
天元の笑顔に安心し、反射的に柊も笑い返すと
はむっと天元が柊の右耳を口に入れる。そしてそのままわざと音が鳴るようにちゅぱちゅぱと耳たぶを甘噛みする。
「っひぁっっ…やぁっ…んあっっ…だめぇ…っ!」
押し返そうと天元の体を押すがびくともしない。
天元は柊の頭越しに見える杏寿郎に目配せをする。
すると柊の背中側にいる杏寿郎は反対の左耳に近づき、「柊、文句なら後でいくらでも開くから。」
そう言うとねっとりとした舌を耳に這わせてチュッチュとキスを送った。