第10章 死神と炎の音
「よう煉獄!水柱の継ぐ子の様子を見に来たんだがまさかお前が居るとは流石の俺も驚いたぜ。杏寿郎君もやっと男になったみたいだしな。」
ニヤニヤと柊と杏寿郎を交互にみると杏寿郎は咄嗟に布団を柊に頭から被せる。
「見るなっ!!」
いきなり視界を奪われた柊は「おい、杏寿郎!なにするっ!」とモゴモゴと動いている。
「ざんねーん。もうバッチリ見ちゃった!」
ケラケラと笑う天元に杏寿郎はため息をつく。
バサっと柊は布団からボサボサになった頭だけを出す。
さっきまでの臨戦態勢になっていた冷たい視線の柊とは全く違うどこかおどけない少女の姿に天元は自然と笑みをこぼす。
「俺は音柱の宇髄天元だ!派手によろしくな煉獄の嫁!」
バンっと後ろに効果音が付きそうな天元の挨拶に呆気に取られるが、
「私はリーン柊だ。天元、何度も言うが杏寿郎の嫁ではない。普通によろしく頼む。」
2人の身支度が終え、客間に集まる。
「何故宇髄は水柱邸に?」
「あー、昨夜冨岡にたまたま会ったんだ。長期で留守にするから暇なら弟子の鍛錬に付き合ってくれって頼まれたんだ。噂の『雪白姫』にも会いたいと思ってたしな。」
「「雪白姫??」」
杏寿郎と柊の声が重なる。
「なんだ?知らねえの?お前さん隠の間でえらい噂になってるぜ。雪のように白く儚げな美人新人隊士がいるってな。最近外国から入ってきたグリム童話ってのに出てくるお姫様になぞらえてそんなあだ名がついたみたいだな。いつも単独任務で、担当する隠も決まってて情報が全く出てこない。一瞬だけ見かけた隠が騒ぎ立てて噂が広まったんだと。」
他人事のように話す天元。まぁ実際他人事だが。
「まぁ俺は煉獄から姫さんの事や冨岡んとこに修行しに行く事とか聞いてたからな、あいつに頼まれなくてもその内会いに行こうとは思ってたわけよ。」
「私のことを杏寿郎が話したのか?」
「なに?どんな話したか気になる?」
ニヤニヤと顔を近づける天元。
「宇髄!その話はもういいだろう!」
「照れちゃって。まだまだお子様だねぇ杏寿郎クンは。まぁ噂なんてアテになんねぇよな。『儚げ』なんて言葉どっから湧いてきたんだか。どっちかっていうと「死神だ。」…。」
天元の言葉を柊が遮る。