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上書きしちゃった

第11章 ほどけない指先


飲み始めてすぐ、女は緊張を解きほぐすようにぐいぐいとアルコールを進めていった。

「……あー、しみるー。」

タ「飲みすぎんなよ。」

「大丈夫、大丈夫!」

だんだんと頬が赤くなり、目元がとろんとする。

普段なら少し遠慮がちに笑っている彼女が、今は身体ごと甘えるように近づいてくる。

「タツヤぁ、ラジオで意地悪だった。」

タ「え、俺?」

「うん、わざと聞いたでしょ、新曲のこと。」

タ「まぁ……そうかもな。」

膝を寄せてきた女の身体が触れる。

柔らかな髪の香りが、酔いに混じって甘く鼻をくすぐった。

なとりは缶を持ったまま、それを見て黙っている。

笑ってごまかそうとしながらも、その視線には微かな嫉妬が滲んでいた。

女はそんな2人の空気に気づかないまま、さらに身を寄せる。

「ねぇ、タツヤってさ……ほんとはどう思ってるの?」

タ「何が?」

「わたしのこと。」

挑発するような声。

けれど、瞳は潤んで揺れていた。

キタニは一瞬言葉を飲み込み、苦笑を浮かべる。

タ「そういうのは……酔ってない時に聞けよ。」

「やだ、今聞きたい。」

そのやりとりの最中、女はふらりと彼の膝に顔を埋めた。

呼吸が近く、熱が直に伝わる。

そして無意識のように手が伸び、布越しに彼を撫でる。

タ「……っ。」

一気に空気が変わった。

なとりが驚いたように缶をテーブルに置く。

な「ちょ、かや……。」

だが女はもう抑えが利かない。

酔いに火照った頬のまま膝元に顔を寄せ、ジッパーを下ろす音を響かせた。

タ「おい……。」

止めようとしたキタニの声も虚しく、女は布の隙間から彼の熱を取り出す。

触れた瞬間、彼女は小さく笑った。

「……あったかい。」

次の瞬間、舌先が触れる。

ぬめる感触と、熱のこもった吐息。

彼女は夢中で舐めるように唇を這わせた。

タ「……っく、やば。」

キタニの喉がかすれる。

なとりは目を逸らすこともできず、ただ唇を噛んだままその光景を見ていた。

胸に押し寄せる嫉妬と興奮。

手が膝の上で震える。
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