第8章 すれ違う吐息
タ「素直だな。体は正直だ。」
耳元で囁く声に、女の全身が粟立つ。
なとりが堪らず女の腕を掴み、タツヤから引き剥がそうとする。
な「俺の目の前で触るなって言ってるんです!」
だがタツヤはその腕を軽く振り払い、逆に女をソファへ押し倒した。
タ「だったらお前も止めてみろよ。こいつが俺を拒めるならな。」
女の視界いっぱいに広がるタツヤの顔。
荒くなった呼吸が頬を撫で、彼の熱い指が服の隙間を探る。
「や……っ。」
必死に声を絞り出すが心臓は高鳴り、身体は熱に支配されていく。
タツヤの唇が首筋を辿り鎖骨へと触れた瞬間、女は小さく悲鳴を上げた。
「……ぁっ……!」
その艶やかな声が、なとりの中の理性を完全に吹き飛ばした。
な「……もう我慢できない。」
彼は女の反対側に回り込み、震える唇を奪う。
2人から同時に与えられる熱。
片側ではタツヤの荒々しい手が肌を這い、もう片側ではなとりの必死な口づけが息を奪う。
女は逃げ場を失い、身体をのけぞらせながら溺れるように声を漏らした。
「だめ……やめて……っでも……あぁ……。」
タツヤの手はついに衣服の奥へと潜り込み、直に柔らかな曲線を掴む。
タ「……やっと触れた。」
低く呟き、容赦なく弄ぶ。
女の視界が揺れ、頭の奥が真っ白になっていく。
それでも両側から与えられる熱に、体は拒むことなく受け入れてしまっていた。
なとりが荒い呼吸のまま、女の耳元で囁く。
な「……俺だけを見てて。タツヤさんに奪われるのなんて嫌だ……。」
その言葉に、女の胸が痛みと甘さで締めつけられる。
タツヤの手も、なとりの唇も、どちらも強く、熱く、もう拒む余地を残してはいなかった。
女は震える声で名前を呼んだ。
「……タツヤ……なとり……。」
2人の男はその名を聞いた瞬間、互いに睨み合いながらも女から離れることができなかった。
焦りと独占欲、そしてどうしようもない欲望。
その全てが絡み合い、熱はさらに深く燃え上がっていった。