第9章 拒めない衝動
女をソファに押し倒したまま、タツヤは肩で荒い息を吐き出していた。
その顔にはいつもの余裕そうな笑みが張り付いては、いたが目の奥には焦燥の色が見え隠れしている。
一方で、隣に控えるなとりは落ち着いた表情をしていた。
だがその静けさの裏に潜むものは、冷静さではなく抑え込みきれない嫉妬と独占欲。
女はその狭間に挟まれるように身を震わせていた。
「……っタツヤ……なとり……。」
掠れた声で2人の名を呼ぶ。
タツヤはその声に一瞬だけ口元を吊り上げ、女の顎を掴んで顔をこちらに向けさせると深く口づけを落とした。
舌が絡み、呼吸が奪われ女の胸が切なげに上下する。
彼の手はすでに迷いなく衣服の奥へと滑り込み素肌を掴んでは撫で、確かめるように揉みしだいた。
タ「やっと俺の手の中だ……。」
熱を帯びた声が耳元に落ちる。
その響きだけで女の身体は震え、力が抜けていく。
しかしその様子をなとりは静かに見つめていた。
表情こそ冷静に装っているものの、握られた拳には白く血が浮かんでいる。