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上書きしちゃった

第7章 揺れる心


タツヤは驚いた様子も見せず、むしろその挑発を楽しむかのように唇の端を吊り上げた。

タ「ははっ、言うじゃん。真っ直ぐで良いねぇ。」

わざとらしくソファに深くもたれ、余裕を崩さない態度で缶を転がす。

タ「でも……あげられねぇな。」

その言葉はあまりにも軽やかで、だが重い。

女は2人の間に挟まれたまま、視線を泳がせるしかなかった。

な「なんで、ですか。」

なとりは食い下がる。

な「俺は本気で言ってます。冗談でも、駆け引きでもないです。」

タ「分かってるよ。だから余計に……あげられないんだよ。」

タツヤはゆるく笑い、女の方へとちらりと視線を送る。

タ「ほら、見ろよ。今も困ってんじゃねぇか。」

確かに、女は胸の奥で嵐のような感情が渦巻いていた。

なとりのまっすぐすぎる言葉も、タツヤの余裕ある否定も、どちらも心を強く揺さぶる。

「……私は。」

女が口を開こうとすると、タツヤが軽く手を上げて制した。

タ「無理に答えなくて良い。そういう顔させちまう時点で、俺ら2人とも同罪だから。」

挑発的でありながらも、どこか優しい言葉。

なとりは奥歯を噛み、悔しそうに視線を落とした。

な「……やっぱり余裕ですね、タツヤさんは。」

タ「そう見えるなら、成功だな。」

タツヤは笑ってみせるが、その奥にわずかな影が差しているのを女は見逃さなかった。

彼もまた、決して平静ではないのだ。

なとりはグラスを握り締め、もう1度女を見つめる。

な「でも……俺は引きません。例え相手がタツヤさんでも。」

真剣な眼差しがぶつかる。

その強さに、女の胸は熱く締め付けられた。

タツヤは一呼吸置いてから、大きく息を吐いた。

タ「良いねぇ。そうやって真正面から来るやつ、嫌いじゃない。」

そして女に向き直り、穏やかな笑みを浮かべる。
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