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上書きしちゃった

第7章 揺れる心


タ「ははっ……お前、マジで言ってんのか?」

な「……冗談で言うわけないです。」

なとりの返答は真剣そのものだった。

周りの出演者たちは、2人のやり取りに

ス「やべぇ。」

ス2「本気だな。」

と囁き合い、場の熱が一気に上がる。

それを感じ取った女は顔が熱くなるのを抑えきれず、どうすれば良いのか分からずに俯いた。

タツヤはグラスを軽く傾け、1口飲んでから女に視線を移す。

タ「なあ、どう思ってんだ? 俺と、なとり。どっちと仲が良いんだよ。」

あえて意地悪に問う。

女は慌てて首を振る。

「そ、そんな比べられることじゃ……。」

だが、タツヤの挑発めいた笑みも、なとりの必死な眼差しも、どちらも視線を逸らせないほど強くて――

彼女の胸をかき乱していた。

会場のざわめきの中、3人の間にだけ奇妙に濃い時間が流れていた。





会場の熱気が少しずつ落ち着き、打ち上げもお開きの空気を漂わせ始めていた。

ステージでぶつかり合ったアーティストたちが、互いの健闘を讃えながら帰路に就いていく。

笑い声とグラスの音が薄れていく中、女はタツヤとなとりに挟まれるようにして外へ出た。

夜風は、フェス会場の喧騒を洗い流すようにひんやりとしていた。

空には星がまばらに瞬き、どこか祭りの後の寂しさを帯びている。

タ「まだ帰るには早いな。」

ポケットに手を突っ込みながらタツヤが呟いた。

タ「せっかくだし、もうちょっと飲みたい気分だろ?」

女が返事を迷うよりも早く、なとりが口を開いた。

な「……じゃあ、俺の家で飲みますか? 店はもう混んでるだろうし。」

その提案に、タツヤが口笛を鳴らす。

タ「おー、良いじゃん。なとりん家か。お前ん家ってどんな感じなんだ?」

な「普通の部屋ですよ……別に特別なものはないです。」

タ「いやいや、楽しみだな。ほら、行こうぜ。」

気づけば、2次会の行き先は自然と決まっていた。
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