第5章 君を映す歌
な「泣いても……かわいい……もっと欲しくなる……。」
吐息混じりに囁かれ、羞恥と快感で頭が真っ白になる。
やがて彼の動きが乱れ始める。
奥深くまで押し込んだまま、震える声で名前を呼んでくる。
な「……っ、もう……だめ、出そう……。」
必死に堪えるように目を閉じ、背を反らす。
抱きしめる腕がさらに強くなり、体ごと彼の熱に呑み込まれていく。
な「……あなたの中で……イキたい……。」
切羽詰まった声。
その響きに、胸の奥が熱くなる。
「……なとり……。」
呼んでしまえば、彼は堪えきれずに深く突き込んだ。
な「っ……!」
鋭い声と共に、全身が震え彼が果てる瞬間の熱が体の奥に流れ込んでいく。
「……あぁ……っ……。」
掠れた吐息と共に、なとりはしがみつくように体を重ね震えを止められずにいた。
しばらくの間、彼はただ息を荒げながら抱きしめ続けた。
頬を押し付けて、安堵したように微笑む。
な「……ほんとに……幸せ。」
照れくさそうに笑いながらも、声は心の底から満ちていた。
まだ鼓動が速く、体は余韻に包まれている。
けれどその瞳は、やっぱり嬉しそうで、楽しげで……
そして、子供みたいに無邪気な輝きを宿していた。
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スタジオの照明が落とされ赤い“ON AIR”のランプが消えた瞬間、ふっと肩の力が抜ける。
つい数分前までの張り詰めた空気が嘘のように、場が柔らかさを取り戻していく。
ス「お疲れさまでしたー。」
スタッフの声が飛び交い、出演者がそれぞれ挨拶を交わす。
キタニはマイクから身を離し、リラックスした笑顔を見せていた。
だが本番中、かやの視線はどうしても彼を追ってしまっていた。
話の流れで軽く冗談を交わしたり、音楽について意見を述べたり。
表面上は何も変わらない――
そう思わせながら、言葉の端々には確かに距離感があった。
深夜の密室で見せる彼の表情を知っているからこそ、余計にその“1線”が鮮やかに感じられてしまう。
タ「緊張してた?」
スタジオを出た瞬間、不意に横から声がした。
振り返ると、キタニが片手に水のペットボトルを持ちながらかやを覗き込んでいた。
「……ちょっとね。」