第3章 重なる夜
タ「……泣き顔も……可愛いな。」
濡れた頬に口づけを落とし、涙を舐め取る。
その仕草に女は小さく首を振るが次の瞬間に与えられる衝撃に、かすれた声を上げるしかなかった。
「やぁ……っ、むり……っ。」
タツヤは笑みを浮かべる。
タ「……無理じゃない。お前はまだ、俺を受け入れてるだろ。」
言葉通り、女の身体は反射的に震え彼の動きに応えるように締め付けていた。
その事実がタツヤの余裕を削ぎ、奥底に隠していた嫉妬と欲望をさらに煽る。
タ「……っ、く……。」
低く唸り声を洩らし、彼の呼吸が乱れていく。
余裕を崩さぬように振る舞っていたはずのタツヤの表情が、次第に熱に歪む。
女を抱き締める腕が強くなり、腰の動きが速まる。
タ「……可愛い……可愛すぎる……。」
耳元で繰り返される囁きは、もはや抑制の効かない吐露だった。
女は涙を零しながら必死に首を振る。
「や、だ……タツヤ……もう……っ。」
その声が決定打だった。
タツヤの奥底に潜んでいた余裕は完全に砕け、男としての本能だけが表に出る。
タ「……っ、俺も……もう、止まれない……!」
荒い息を吐き、最後の一撃を深く沈める。
女の全身が強張り、甘い悲鳴が迸る。
「――っあ……ぁ……!」
その瞬間、タツヤは女の奥で果てた。
全身を強く抱き締め、震えながら吐き出す熱が彼女の中に広がる。
余裕を保とうとした彼の瞳も、果ての瞬間には完全に熱に溺れていた。
タ「……は……ぁ……。」
荒い息を繰り返しながら、女を離そうとはしない。
抱き締めたまま額を重ね、震える唇で耳元に囁く。
タ「……お前は……俺のものだ。」
その声は低く、甘く、嫉妬と執着が絡んでいた。
女は涙に濡れた瞳で、ただ小さく首を振るしかなかった。
隣でなとりは、荒い息を吐きながらその光景を見つめる。
自分よりも遅く果てたタツヤの姿に悔しさと同時に焦燥を覚え、再び体の奥で熱が疼くのを感じていた。
女を抱いたタツヤの余韻と果てながらも、なお求めるなとりの熱。
夜はまだ、終わりを告げる気配を見せてはいなかった――。