第27章 また3人で
珍しいな、と思いながら通知を開くと短いメッセージがそこにあった。
タ【今日、3人で飲みにいかない?】
思わず立ち止まり、画面を凝視した。
胸が高鳴る。
何度も見返しても、間違いなくその文面はそこにある。
数年間、避けてきた境界線を彼が自ら越えようとしている。
迷う余地なんてなかった。
指は自然と動き、返した。
【行く】
送信ボタンを押した瞬間、胸の奥に小さな灯りがともったように温かくなる。
すぐに
タ【了解】
という短い返信が届き、集合場所と時間が送られてきた。
夜の街はにぎやかで、久しぶりに心が浮き立つような感覚を覚えた。
指定された居酒屋に着くと、先に2人が待っていた。
キタニは相変わらず落ち着いた佇まいで、なとりは少し緊張を隠すように笑みを浮かべている。
「……ひさしぶり。」
な「ほんとにね。こうして3人で飲むの、何年ぶりだろう。」
タ「ラジオ終わりにさ、前はいつも一緒にご飯行ってたのにな。」
その言葉に、女は思わず笑った。
懐かしい記憶が一気に胸に押し寄せる。
席に着きビールで乾杯する音が重なった瞬間、時の流れが少しだけ巻き戻ったように感じた。
最初はぎこちなかった。
「最近どう?」
と互いに当たり障りのない話をして、仕事の愚痴や業界の近況を語り合う。
だが、グラスが進むにつれ徐々に雰囲気は柔らかくなっていった。
タ「なあ覚えてる? あの時、収録で噛みまくってさ。」
な「タツヤさんでしょ、それ。俺まで笑い止まらなくなってディレクターに怒られたんですから。」
「そうそう、そのあとみんなでファミレス行ったんだよね。」
次々と思い出が甦り、3人の笑い声が絶えなくなる。