第27章 また3人で
テレビをつけても、内容が頭に入らない。
音楽を流せば、2人と過ごした時間の記憶が蘇ってしまい余計に胸が痛む。
「……どうして、こんなに。」
思わず独り言がこぼれる。
頭では理解している。
芸能の世界では、噂ひとつで人生が狂う。
2人を守るため、自分も守るため距離を置くことは正しい判断だと。
それでも、心が追いつかない。
夜が更けるたび、孤独の濃さは増していく。
暗い部屋の中、ひとりでいると自分が透明になってしまったかのような錯覚すら覚える。
「大丈夫、大丈夫……。」
声に出して自分をなだめても、その声すら頼りなく消えていく。
翌日、また仕事場で2人に会う。
キタニは変わらず冷静に進行を仕切り、なとりは柔らかい笑みで相槌を打つ。
それは以前と変わらないはずなのに、どこか遠い。
まるで分厚いガラス越しに接しているような距離感だった。
そして仕事が終われば、自然に解散となる。
「お疲れさま。」
タ、な「お疲れ。」
そう言葉を交わすと、3人はそれぞれ違う方向へ歩き出す。
女はその背中を見送るたび、胸の奥にぽっかりと穴が開いていくのを感じていた。
以前の自分なら、仕事の終わりが楽しみだった。
今は、仕事の終わりが1番怖い。
終わった瞬間に押し寄せてくる孤独が耐えがたく、のし掛かるから。
家路につく足取りは重く、夜風の冷たさが身に沁みた。
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数年という月日が経つのは、本当にあっという間だった。
ラジオ収録を終え、スタッフに挨拶を済ませてスタジオを出た帰り道。
夜の空気はひんやりとしていて、緊張感の抜けた体に心地よかった。
いつもならそのまま真っ直ぐ家に帰る。
プライベートで2人と会うことはなくなって久しい。
仕事で顔を合わせることはあっても、必要以上の会話はしない。
それが何年も続いていた。
――そんな日常を破ったのは、不意に震えたスマホだった。
画面を見ると“タツヤ”の文字。