第27章 また3人で
その理屈は正しかった。
だからこそ、余計に苦しい。
なとりも目を伏せ、重くうなずいた。
な「……そうですね。俺も、そう思います。」
女は唇を噛みしめる。
反論したかった。
もっと一緒にいたいと言いたかった。
けれど、2人が口を揃えて現実を見据えているのに自分だけが感情で動くことなどできなかった。
「……わかった。」
それだけを絞り出すと、リビングの空気はさらに冷たくなった。
しばらくしてキタニは深くソファに腰を下ろし、手を組んだ。
タ「今後、外で一緒にいるところを見られたら、全部疑われる。仕事以外では極力関わらない。それが1番安全だ。」
なとりが小さくうなずく。
な「俺も同意します。」
その横顔は悔しさを隠しているようだった。
女は何も言えず、ただ俯いた。
頭では理解している。
だが胸の奥には言葉にできない寂しさと、切り捨てられたような痛みがじくじくと広がっていた。
「……そうするしかないよね。」
小さな声で同意した瞬間、リビングに重苦しい沈黙が落ちた。
それぞれが胸に言えない思いを抱えたまま、その夜は深く更けていった。
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それからの日々は、どこか色を失ったように淡々と過ぎていった。
スタジオで顔を合わせることはある。
打ち合わせや収録で同じ空間にいることも少なくなかった。
だが、以前のように軽口を交わしたり冗談を言い合って笑ったりすることはもうなかった。
「今日の資料、これで大丈夫ですか。」
タ「うん、それで進めよう。」
「次回は午後からだから、午前中にチェックだけお願いします。」
そんなやりとりは、冷たくはないけれど必要最低限だった。
互いの距離を保ち、余計な波を立てないように――
3人ともが、暗黙のうちにそう決めているかのようだった。
女はその雰囲気に慣れようと努めた。