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上書きしちゃった

第26章 交わる現在、戻らない過去


歌「よかったらさ、このあと食事でもどう?」

気軽な口調だったが、その視線は真剣だった。

心臓が跳ねた。

けれどすぐに理性が押し戻す。

「ごめんなさい。今日は……タツヤとなとりと一緒に帰るから。」

柔らかく断ったつもりだった。

だが、彼は引き下がらなかった。

歌「そうか……でも、その前に1つだけ。告白の返事を、聞かせてほしい。」

その場の空気が少し重くなった。

女は息を呑み、俯いた。

ずっと胸を締めつけていた思い。

今なら伝えられると思った。

「……やっぱり、あの告白の件はなかったことにしてほしい。」

沈黙。

そして次の瞬間、彼の瞳から笑みが消えた。

歌「……は?」
 
低く呟いた声。

すぐに舌打ちが響く。

その豹変に、女の背筋が凍りついた。

歌「ふざけてる?」

「ちが……本当に、そういう意味じゃ――。」

言い訳を最後まで言えなかった。

彼は強い力で女の肩を掴み、そのまま背中を押しつけるようにしてエレベーターホールへと追い込んできた。

「や、やめて……!」

必死に抵抗するが、力はまったく敵わない。

ちょうどエレベーターが到着し、ドアが開いた。

彼は逃さないようにするかのように女の腕を強く引き、狭い箱の中へと押し込んだ。

な「待って!」

背後から声が響いた。

振り返ると、廊下の奥から駆けてくる2つの人影。

キタニとなとりだ。

タ「おい、何してんだ!」

な「離せ!」

必死に叫ぶ声が近づく。

だが、彼は冷たい笑みを浮かべながらドアの“閉”ボタンを乱暴に叩いた。

女の目の前で、重い金属の扉が無情に閉まっていく。

「やだ、待って! タツヤ、なとり!」

必死に手を伸ばす。

だが間に合わない。
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