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上書きしちゃった

第25章 曖昧な幸せ


沈黙の中でスマホの画面が消え、再び暗闇に戻る。

その黒い画面に映るのは怒りでこわばったなとりの顔と、涙目の女。

なとりは深く息を吐き、震える声で続けた。

な「……答えろよ。本当に、あいつが好きなの?」

女は唇を噛みしめた。

酔いの霞がまだ頭に残るが、心だけは鮮明に疼いている。

“恋”と感じてしまった気持ち。

でも――

目の前で必死に問いかける彼の存在も、決して軽いものじゃない。

胸の奥で、2つの感情がせめぎ合っていた。






背後から投げかけられた声に、女の身体はびくりと跳ねた。

タ「へえ、告白したんだ。」

低く、どこか嘲るような響きを帯びたその声。

振り返れば浴室の湯気をまだ纏ったまま、髪をタオルで拭きながら立っているキタニの姿があった。

ズボン1枚だけのその姿からは熱を孕んだ湯気と、彼特有の冷ややかな視線が同時に迫ってくる。

女は息を呑み、何も言えずに固まった。

「……タツヤ……。」

名前を呼ぶだけで、喉が詰まる。

しかしキタニは、にやりと笑みを浮かべ、ゆっくりとリビングへと歩み寄ってくる。

タ「俺らの気持ち、踏みにじるんだ。」

その声音は冷酷でありながら、熱を帯びている。

女は必死に首を振る。

「ちがうの……そんなつもりじゃ――。」

タ「違う?」

ソファに座るなとりの隣に立ちながら、キタニは目を細める。

タ「じゃあ、そのメッセージはなんだ? “告白の返事は待ってほしい”って。」

言葉が突き刺さる。

否定しようにも、喉が震えて声にならない。

ただ視線を逸らす女に、キタニは冷たく息を吐いた。

タ「……本当に、どうしようもねえな。」

次の瞬間、彼は女の身体を軽々と抱き上げた。

「きゃ……っ!」

驚きの声を上げる間もなく、リビングの奥にある寝室へと足を進める。
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