第25章 曖昧な幸せ
玄関先でふらつく女の身体を抱えたまま、なとりは深く息を吐いた。
な「まったく……。」
苦々しい声を漏らしつつ彼は彼女をリビングのソファまで運び、そっと横たえらせる。
頬は真っ赤に染まり、まだアルコールの熱が抜けきっていない。
な「お前さぁ……。」
小さくぼやきながら彼はキッチンに向かい、水をグラスに注ぐ。
冷たい水を口に含ませれば多少は落ち着くだろう。
そう思って戻ると、ソファに投げ出された彼女のスマホがテーブルから小さく震えていた。
――通知音。
画面が明るく点き、メッセージの1部がポップアップで浮かび上がる。
歌【今日はありがとう。コラボ、すごく楽しかった。……それから――告白の返事は、まだ待ってほしい】
その1文を見た瞬間、なとりの手が止まった。
グラスの中で水面が揺れ、氷がかすかに音を立てる。
な「……は?」