第24章 終わらない熱
――やっぱり、この気持ちは恋なんだ。
改めて確信した瞬間、彼が柔らかく微笑んだ。
歌「このコラボ、きっと良い作品になる。君がいてくれて、本当に良かった。」
その言葉に胸が高鳴り、視線を逸らした。
けれど頬の熱はどうしても隠せず、スタジオの空気が甘く溶けていくのを感じていた。
再コラボの収録は夜まで続いた。
集中していたせいであっという間に時間は過ぎ、テイクを何度も重ねた末にようやく完成した音源は互いの声が絡み合う見事な仕上がりになっていた。
モニタールームで2人して聴き返しながら、自然と笑顔がこぼれる。
「本当に良い曲になったね。」
女が感嘆の息を漏らすと、歌い手は肩をすくめて笑った。
歌「君がいたからだよ。じゃなかったら、ここまで自然に混じらなかった。」
そう言われると胸が熱くなる。
自分の存在を認めてもらえたようで、頬に火照りが差した。
収録が終わると、彼は軽く声をかけてきた。
歌「せっかくだし、少しだけ打ち上げしない? そんなに飲まなくても良いから。」
以前、酒で自制を失ってしまったことが頭をよぎる。
けれど“少しだけ”と言われると断れなかった。
結局、2人は駅近くの小さなバーに入った。
カウンターに並んで座り、グラスを合わせる。
歌い手は控えめにビールを、女は“今日はほんの1口だけ”と決めていたはずが雰囲気に流されて何杯か重ねてしまった。
歌「君と話すと、本当に楽しいな。」
笑顔で言われるたび、心臓が跳ねる。
甘い言葉に緊張が溶けていき、アルコールも相まって頬はすっかり赤らんでいた。
気がつけば終電を逃す時間になり、歌い手がタクシーを呼んでくれた。
歌「送るよ。こんな時間に1人で帰らせるわけにはいかない。」
そう言われれば反論できず、タクシーの中でも酔いが回って肩にもたれ掛かってしまう。
彼は困ったように笑いながらも拒まなかった。
やがて自宅前に着き、歌い手は女を支えるように降りた。
歌「大丈夫? 階段、気をつけて。」
「……うん……。」
ふらつく足取りのまま、ようやく玄関前へ。
歌い手はインターホンを押した。